ミトコンドリアについてのアップデート3

以前、新型コロナ感染症の後遺症の研修会で治療を聞いたとき、
一時的にではあるが分枝鎖アミノ酸(BCAA)や5-ALAが有効な場合がある、
という話を聞きました。
後遺症オンライン研修会:平畑先生講義3

その時思いついたのが、
「これ、ミトコンドリアが何らかの関係があるんじゃないか」ということ。
ま、素人とほとんどかわらない医者の山勘なので、
全くの的外れの可能性が高いのですが。

そんなこんなでミトコンドリアについて興味を持ちながら
インターネットをさまよっていたときに、
”Mitochondria”の文字に目が止まり、思わず論文を読んでみました。
ミトコンドリアについてのアップデート1
ミトコンドリアについてのアップデート2 

自分の知らなかったミトコンドリアの話がたくさん書いてありました。
こうなると知識欲が燃えてきて、
上記の投稿の最後に書いた雑誌を取り寄せて読んでみました。

実験医学 Vol.37 No.12 2019 増刊号 ミトコンドリアと疾患・老化,羊土社


どうしても専門的な雑誌ですのでかなり難しいのですが、
まあ、わかる範囲で読んでみました。

このブログは僕の備忘録も兼ねてるので、ここにアップしておきます。
興味を持たれた方は買って読んでみてください。
ただ、これを読んだからと言って、
Long-COIVDの解決法がすぐにでてくるわけではありません。
念のため。

<概論>p.10
ミトコンドリアに対する概念は
「エネルギー産生を担う均質な粒状オルガネラ(細胞内小器官)」
という古典的な概念から、
「シグナルを検知・処理し、発信する高次機能を制御するオルガネラ」
という新しい姿に変貌した。

<第1章>ミトコンドリアの基礎研究の飛躍的進展
ミトコンドリアは常に融合と分裂を繰り返すダイナミックなオルガネラである。p.18

内膜と外膜という2枚の脂質膜に囲まれた二重膜構造からなる。
内膜には4つの呼吸鎖複合体およびATP合成酵素が存在し、
それらが共役することで膜を介したプロトン勾配によってATPが合成される。

これまでは多くの教科書などでは、
ミトコンドリアは小さな豆粒状の構造として描かれていることが多かったが、
細胞内には様々な大きさ・長さのミトコンドリアが存在し、
個々のミトコンドリアの大きさは不定形である。
ライブ観察すると、ミトコンドリアが細胞内で活発に動き、
その形を変化させている
のがわかる。
また、細胞質内に細長く枝分かれしたネットワークを形成している。

心筋の異常から発症する拡張型心筋症の原因の一つとして、
ミトコンドリア同士が融合する時に発現する遺伝子の異常が見つかっている。

ヒトのミトコンドリアのDNA(mtDNA):p.24
16,569塩基対の環状コピーゲノムで、1細胞に通常数百~数千コピーが存在。
母系遺伝。
13種類のmRNA、22種類のtRNA、2種類のrRNAがコードされている。

mtDNAの複製モードに3種類あり、その使用比率は組織・細胞間で異なる
・・・その理由は謎。
この能力が、さまざまな組織、細胞に適合したミトコンドリア機能の発現に
必要なのではないかとのこと。

ここ10年の研究により、異なるオルガネラ同士は直接結合し、
物質や情報を交換することにより、
オルガネラの正常な機能発現に必須であることが明らかになってきた。

特に、小胞体ーミトコンドリア間で物質や情報を交換させる膜接触場、
すなわちコンタクトサイトの重要性が注目されている。p.45

小胞体は、多様な機能を担うととともに、
細胞内外からさまざまなストレスを受けるオルガネラで、
小胞体ストレス応答(unfolded protein response)と呼ばれる。
この応答による品質管理能力を超える強さの、
あるいは遷延化したストレスに小胞体がさらされると
細胞は小胞体ストレス誘導性の細胞死シグナルを発動させて死に至る。
小胞体ストレス応答を構成する3つのシグナル伝達経路の中の
PERK経路と呼ばれるものはミトコンドリアの品質管理に関与。

ミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)は、
不要になったミトコンドリアを特異的に分解排除するシステムで、
ミトコンドリアの機能維持に寄与。

マイトファジーの生理機能と疾患とのかかわりp.62
1)生理的な条件下で起こるマイトファジー
①基底マイトファジー
古くなって傷ついたミトコンドリアを定常的にリサイクルするシステム
②ストレス誘導性マイトファジー
様々な外的刺激により障害を受けたミトコンドリアを速やかに除去するシステム
③プログラムマイトファジー
個体の発生・発達の合わせてさまざまな組織・細胞で起こるマイトファジー

2)疾患とのかかわりp.63
①家族性パーキンソン病
PINK1ーParkin介在性のストレス誘導性マイトファジーの異常によるものと推定
②心疾患
心不全患者の心臓ではPINK1のタンパク質量が減少
マイトファジーは心臓の正常な発達や機能維持に重要

次回に続く