内耳由来のめまい

メニエール病

症状

典型的なメニエール病は、

  1. 回転性めまい(数時間程度持続することが多い)
  2. 耳鳴り(特にブーンという換気扇の音のような低い耳鳴り)
  3. 難聴(最初は低音中心、進行すると全周波数)
  4. 耳閉感(耳のつまった感じ)

といった症状を繰り返します。ただし、最初は全部の症状がそろって出るとは限りません。

メニエール病のめまいは、繰り返すかどうかは別にして、今起こっているめまいは必ず止まります。ずーと2日も3日も1週間もずっと続くというものではありません。(ただし、頭を動かした時のフワーとした感じはしばらく続く時もあります。)

めまいに気をとられがちですが、一つ気をつけておかなければならないのは、難聴です。内耳の病気で低下した聴力は適切な治療を早期に開始しないと、悪いまま固定してしまう場合があります。特に耳のつまった感じや明らかに難聴を自覚する場合は起き上がれる様になりましたら、必ず聴力検査を一度は受けておく方がよいでしょう。一般にメニエール病はめまいの病気と思われていますが、晩年には聴力障害が問題になってきます。特にどちらか一方の耳のメニエール病と診断された患者さんの3割は反対側の耳にも聴力障害が生じてくると言われています。

原因

明らかな原因はまだはっきりとはわかっていません。

しかし、内耳の液(内リンパ液)が過剰になり内耳圧が上がっている状態(内リンパ水腫)がメニエール病の本態であるということはわかっています。なぜ内耳圧が上がるかについては、内リンパ液の産生が増えるという説と、吸収される場所(内リンパ嚢)が根詰まりを起こすのではないかという説、あるいはその両方が関与するのではないか等考えられています。

診断

日常の臨床レベルでは、聴力検査所見とめまいの性状でおおよそ見当がつきます。ただし、よく似た他の病気を除外しておくためには、いろいろな検査が必要な場合もあります。

  • 聴力検査:メニエール病の典型例では、低音の聴力が低下しています。また、日によって聴力の変動が大きいことも参考になります。
  • グリセロールテスト:グリセロールという薬を服用し、服用前と服用後3時間後で聴力を測定します。聴力の改善が見られる場合に陽性で、メニエール病の本態と言われている内リンパ水腫があると考えられます。
  • 蝸電図検査:鼓膜のそばの外耳道に電極を貼り、音を聞いているときの脳波と類似の電位を調べます。内リンパ水腫がある場合に特有の波形となります。

治療

・内服治療:内耳の障害で基本的に使われる薬

  • ビタミンB12製剤(メチコバールなど)
  • ATP製剤(アデホス、ATP)
  • 脳血管血流改善剤(カルナクリン、ヒデルギンなど)
  • 内リンパ水腫治療薬:イソバイド・メニレットなど
  • 抗めまい薬:セファドール・メリスロン・ドラマミン・トラベルミンなど
  • 抗不安剤:リーゼ・セルシン・デパスなど

・外科的治療

難治性メニエール病に対しては外科的治療も行われます。

内リンパ液が過剰になるのがメニエール病の本態と言われています。そこで、内リンパ液の吸収が行われる内リンパ嚢を広く開放して吸収されやすくする手術があります。「内リンパ嚢開放術」と呼ばれ原法を考案した人の名をとり「ポルトマン手術」とも呼びます。

・中耳加圧療法

内服治療と外科的治療の中間に位置する難治性メニエール病に対する治療法でアメリカで始まり注目されています。鼓膜に空気が通るためのチューブを留置し、外耳道から気圧を変動させて中耳の気圧を加圧・減圧させます。この圧変化が内耳に伝わり、内リンパ嚢の根詰まりが解消できるのではないかと考えられています。

・鼓室内ゲンタシン注入

ゲンタシンという抗生物質は内耳毒性があり、大量長期使用すると難聴をきたすので、殺菌目的のためには最近はあまり使われなくなっています。このゲンタシンの内耳毒性を逆手にとり、鼓膜切開を行い中耳にゲンタシンを注入し、内耳にしみこませて内耳の機能を抑制します。

ゲンタシンのかわりにステロイドを注入する方法もあります。

・生活習慣

メニエール病は内耳を満たしている水が過剰になることから生じると考えられています。このため、以前は水分摂取を制限するように指導する傾向がありました。

しかし、水分摂取の制限は、水を貯めようとするホルモンが内耳に働くのでよくないとの考え方もあり、むしろ最近では、水分は適度な量を定期的に摂取する方がすすめられています。(もちろん、過剰な水分摂取はいけません。)

その際、塩分を控えめにすると身体に余分な水分が溜まりにくくなります。そのほか、寝不足・過労・ストレスを貯めない様に心がけましょう。

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良性発作性頭位めまい症(BPPV)

聞き慣れない病名ですが、耳から起こるめまいとしてはかなりポピュラーで、メニエール病に次いで多い病気です。 英語ではBenign Paroxysmal Postional Vertigoと呼ばれ略してBPPVと呼ばれます。

症状

典型的な病状は、普通にじっとしていれば何ともありませんが、うつむいたり、寝転んだり、寝返りをした時にめまいが生じます。典型的な場合は回転性めまいですが、程度が軽い場合はフワーとしためまいのこともあります。ただし、この症状だけでは他のめまいとの鑑別はできません。「寝返りをしたらめまいがする」という症状は他のめまいでも起こりえます。

めまいの出方をよく観察しなければいけません。

めまいの持続時間は同じ頭の位置を続けている場合普通30秒程度(数秒~2分程度まで)で、何分も持続することはありません。 しかし同じ動作を繰返すとめまいが再び起こりますが少し軽くなります。さらに繰り返すとだんだん症状が軽くなり消えてしまうこともあります。そして、10分程度してから同じ動作を行うと前と同じくらいのめまいが再び生じます。

メニエール病と違って、普通難聴や耳のつまった感じ、耳鳴りなどは伴いません。
(ただし、メニエール病の一つの症状として良性発作性頭位めまい症と同様のめまいが出現する場合もあります。この場合は、患側の聴力が軽度低下している場合もみられます。)

原因

三半規管という内耳でも回転を感じるところに結石(ゴミ)ができてそれが頭を動かした際に動いて、あたかも身体が回転しているように感じるのだろうという説が有力です。 まったく思い当たる原因のない人もたくさんいますが、以下のような人に多い傾向があります。

  1. 高血圧や糖尿病、中性脂肪やコレステロールが高い人:動脈硬化により内耳に流れる血流が慢性的に悪くなっている場合。三半規管の中の加速度センサーに血液が行き難いためにセンサーが壊れ、ゴミになる?(推定)。
  2. 頭をある程度の衝撃でぶつけた後:衝撃でセンサーがはずれてゴミになる?(推定)。
  3. 長時間同じ格好で寝たあと。手術後など:同じ頭の位置を維持することで、三半規管の中にあったごく細かなゴミが沈殿して一定の大きさのゴミになる?(推定)

治療

以前は一般的な内耳由来のめまいと同じ治療が中心に行われてきました。

しかし、近年三半規管の中を浮遊する結石を連続した頭の運動で三半規管の外に出す治療法(浮遊耳石置換法:Eply法・Semont法・Lempert法あるいはその変法など)の有効性が認められ、徐々にひろまってきました。

この方法は比較的簡単ですが、やり方によっては逆効果になることもありますので、必ずめまい治療のトレーニングを行ったことのある医師に相談してください。 本当に良性発作性頭位めまい症なのか、責任耳は左右どちらの耳のどの三半規管なのかをしっかり見極めることがまず重要です。 めまいに精通した医師はこの病気を思い浮かべた場合には、必ず寝転んだり起き上がったり、頭の位置を変えながら、目の動きを調べます。眼球の動きが特徴的だからです。

難治性のBPPVに対しては、三半規管の働きを止めるためにふさいでしまう手術(選択的半規管遮断術)が行われる場合もあります。

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突発性難聴に伴うめまい

突発性難聴はその名の通り突発的に難聴をきたす病気ですが、時にめまいをきたす場合があり、逆にめまいが先行する場合はめまいに気をとられて難聴が発見されるのが遅れる危険があります。

突発性難聴のめまいは時間経過で徐々に軽快する場合が多く、強いめまいを繰り返すことはあまりないと思います。もし、めまいを伴った難聴を繰り返す場合は、メニエール病など他の病気の可能性を考える必要があります。

治療は、めまいについては他の内耳性のめまいとおおむね同様です。
むしろ難聴の治療をしっかり行う必要があります聴力は2週間以上たつと改善しにくくなります。このため、聴力低下が強い場合、全身的に問題がなければ、ステロイドの投与を検討します。

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内耳炎

細菌感染やウイルス感染で内耳が炎症を起こした場合、難聴やめまいが生じます。

  • 急性中耳炎に伴う内耳障害
  • 慢性中耳炎に伴う内耳障害
  • 髄膜炎の内耳波及に伴う内耳障害

などがあります。

治療は、ウイルス感染の場合、ビタミンB12やATP製剤とともに、ステロイドが用いられます。細菌感染の場合、抗生剤も用いられます。
特殊なタイプとして、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)に合併する、ムンプスウイルスによる内耳炎があります。

急性中耳炎に伴う内耳障害は、比較的治りやすい場合が多いですが、やはり早期発見・早期加療が大切です。

慢性中耳炎に伴う内耳障害は、中耳炎を何度も繰り返すうちに徐々に生じます。特殊なものとして、真珠腫性中耳炎に伴う内耳障害があります。これは、細菌感染の内耳波及だけでなく、真珠腫による直接的な内耳破壊も時にみられます。手術が必要です。

最近ではまれになりましたが、梅毒スピロヘータによる内耳障害(内耳梅毒)があり、他の病気と鑑別する際には念頭においておく必要があります。進行性の両側性難聴とめまい・ふらつき。

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遅発性内リンパ水腫

一方の耳の内耳が何らかの原因で高度難聴を来している場合に、数年から数十年経過したころにメニエール病と同様のめまいが出現する場合があります。この場合、高度難聴側の三半規管が不安定になるタイプ(同側型)と反対の耳の三半規管が不安定になるタイプ(対側型)があります。いずれにしても、グリセロール検査や蝸電図検査が陽性になったりして、内リンパ水腫の存在が示唆されます。治療はメニエール病に準じます。対側型の場合、最終的には両側が高度難聴に進行する場合もあり注意が必要です。

外リンパ瘻

内耳は固い骨の中に存在しますが、中耳とは2ヶ所でのみ接しています。この接点の一方(前庭窓)から音の振動が内耳に伝えられ、もう一方(蝸牛窓)から伝えられたあとの振動が逃がされて情報伝達が終了します。

この2つの窓が何らかの力で破れて、中から内耳液が漏れた状態が外リンパ瘻です。

その結果、蝸牛に障害が起こると難聴・耳鳴り・耳閉感が生じ、前庭や三半規管が障害されるとめまいが生じます。

薬剤による内耳障害

主な内耳毒性をもつ薬剤としては、以下の様なものがある。難聴とめまい・ふらつきの現れやすさは薬剤によって異なるが、投与する場合には聴力等を十分把握しておく必要があります。

  • アミノグリコシド系抗生物質:ストレプトマイシン・カナマイシン・ネオマイシン、ゲンタマイシン・トブラマイシン・アミカシン、アルベカシン(ハベカシン)・バンコマイシンなど。
  • 抗腫瘍剤:シスプラチン・カルボプラチン
  • 利尿剤:フロセミド(ラシックス)

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