本:三体2 

昨日からの続きです。

もし、「三体」を読まれた場合は、ついでに、バックナンバー:
日経サイエンス,2020年3月号 特集『中国のSF「三体」の科学』
もオススメです。


小説『三体』の背景にある物理学について、
解説がなされています。

このサイエンスの特集でも触れられていますが、
少し印象的な文がありました。

それは『三体』のp.400に書かれている文なのですが、
「われわれ(註:地球外生命体)は、地球の科学的進歩を完全に停滞させ、現在のレベルにとどめるため、決定的な行動をとる必要がある。その目標にとって、もっとも重要な点に話を絞ろう。すなわち科学全般の発展は、基礎科学の進歩によってもたらされるということだ」

地球に侵略するには、科学の進歩を食い止めなければいけない。
それには基礎科学の進歩を食い止めることだ、ということです。

おりしも、8月12日に日経新聞31面に、
「基礎軽視・技術偏重に危うさ」
という見出しで、ジャンマルク ニース大学名誉教授の
寄稿文が掲載されていました。

ここ数十年テクノロジーの発展は、
19世紀から20世紀前半にかけての科学理論に基づいている。
テレビ、コンピュータ、スマートフォンなどなど。
GPSもアインシュタインの一般相対性理論を利用したものだし、
生物学における飛躍も1950~60年代の発見に始まるのだと。

ところが、20世紀後半の基礎研究に基づく技術は
あまり存在しないのだそうです。

つまり、このまま基礎科学に新しいブレイクスルーとなる発見がないと、
徐々に科学技術の進歩は鈍化していくことが予想されます。

もちろん科学進歩が必ずしも人類の幸福に繋がるとは限りません。
原爆しかり、交通事故だってそうです。
SNS関連の心身不調なんかもそうかも。

ですが、それは人類が科学を使いこなせていないからで、
そこは哲学や倫理をはじめとする人文系も同時に
進歩していく必要があるということなんでしょう。

また、前後しますが、8月11日の日経新聞朝刊1面に、
「中国論文、質でも首位」という記事がありました。
自然科学の分野で中国発の論文は、
アメリカを抜いて量的にも質的にも1位になったそうです。
中国が科学論文の質で世界一になった理由は?: 日本経済新聞 (nikkei.com)

残念ながら日本は、2008年に5位だったのが、
2018年には10位にまで後退してしまった様です。

人類としての今後の発展を考える上で
科学技術は一つの指標になるのかもしれませんが、
範囲を国家というレベルに落として考えても、
やはり科学技術は一つの国力を表す指標となるかもしれません。

何百年先も日本が日本であり続けるには、
他には負けない科学技術の開発が必要ではないかと思います。
そのためには基礎科学への投資は大切です。

となーんて偉そうに書きましたが、
ドーンと投資するお金もない僕が
何言ってもしょうがないことなんですけどね。