後鼻漏11 後鼻漏に関連する漢方薬2

昨日からの続きです。

参考図書は、
『知られざる後鼻漏-鼻から始まるその不快感の正体』 呉孟達, 幻冬舎

その他、漢方に関するサイトをインターネットから探してきて書いています。

さて、後鼻漏の東洋医学的な考察の続き。
五行論、次は肝系です。

<肝系>
「肝」と言っても、西洋医学的な肝臓とは異なります。
肝臓の機能も含みますが、加えて精神作用や筋肉の症状も含みます。
肝系は精神的ストレスの影響を受けやすいと言われます。
肝気の巡りが停滞=肝気鬱結
⇒胸脇苦満(横隔膜や脇あたりのつまり感と肋骨弓舌の抵抗)
⇒抑うつ感、いらいら、怒りっぽい、情緒不安定、不眠、多夢
=中枢・自律神経系の緊張・失調
仮性後鼻漏で現れやすいとのこと。

下記サイトを参考にすると、
一二三堂薬局 漢方名処方解説 1)肝(かん)と胆(たん)とは

肝気鬱結の具体的な症状としては、イライラ感や気分の落ち込み、
過度な緊張、ヒステリー、喉のつまり感、胸苦しさ、腹部の張り感、
女性の場合は生理不順や生理痛など
⇒喉のつまりは咽頭異常感症ですね。
対応薬:柴胡と芍薬を含む処方
加味逍遥散(24)、四逆散(35)、柴胡疎肝湯(コタロー)

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肝系が脾胃に影響を与えると肝気横逆という状態になるそうです。
二次的に食欲不振、吐気や嘔吐、胃や腹部の痛み、
下痢や便秘といった胃腸障害が起こりやすくなった状態。
対応薬:四逆散(35)、小柴胡湯(9)、大柴胡湯(8)など柴胡剤ですね

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肝気鬱結が長期化してくると肝火上炎という状態になり、
上半身に激しい症状がでるそうです。
強いイライラ感、暴力的な怒り、激しい頭痛、
突然の耳鳴りや難聴、めまい、眼の充血、不眠など
⇒後鼻漏とはちょっと違いますが耳鼻咽喉科関連なので挙げました。

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肝火上炎を放置していると悪影響が心系や肺系にも伝わります。
これを心肝火旺肝火犯肺と言うそうです。
心肝火旺の症状としては焦燥感、じっとしていられない、
動悸、不眠症などが肝火上炎の状態に加わる。
肝火犯肺の症状としては黄色くて粘り気のある痰をともなう咳
肝火上炎の状態に加わるそうです。
⇒ここで痰が出てきましたね。
これらの対応薬:竜胆潟肝湯(76)、黄連解毒湯(15)、三黄瀉心湯(113)
肝火犯肺には、神秘湯(85)、柴朴湯(96)など

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<腎系>
最後に腎系が不調になった場合です。
「腎」は腎臓に近い意味(体内水液の循環・分布・代謝)もありますが、
人体の発育・成長・成熟・生殖などの概念も含みます。

腎陽や腎気の低下(生命エネルギーのようなものが減少)
⇒体内水液の正常な循環・分布・代謝・排泄が障害
⇒無用な水液やその代謝産物が貯留、停滞
=水邪氾濫、腎虚水氾⇒淡飲

再び、一二三堂薬局の解説を参考に考えてみます。
一二三堂薬局 漢方名処方解説 5)腎(じん)と膀胱(ぼうこう)とは

腎虚(腎気虚):腎に蓄えられている精が不足した状態
成人以降の主な腎虚の症状としては疲れやすさ、腰痛や腰の重だるさ、
頻尿や夜間尿、記憶力の低下、視覚や聴覚の低下、精力・性欲の低下、
白髪や抜け毛の増加、女性の場合は早期の閉経や不妊症など
⇒加齢性の聴力低下は腎虚なんですね。
対応薬:八味地黄丸(7)や牛車腎気丸(107)など
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腎陽虚:腎における気の力が低下し、
温煦作用(気の身体を温める作用)が充分に発揮できなくなった状態
腎気虚の症状にくわえて足腰の冷え、薄い尿が多く出る、
軟便、顔の青白さなどが現れるそうです。
さらに腎系と脾系は関連が強く、両方が不足(脾腎陽虚)となりやすい。
対応薬:上記2つに真武湯(30)や附子人参湯を併用
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腎虚水氾:腎における気化作用が衰えている状態
つまり、余分な水分を尿にとして排泄できない状態。
具体的な症状としては下半身を中心とした全身のむくみ、
尿量の減少、排尿困難などだそうですが、
これが、鼻咽頭の淡飲にもつながる様です。
対応薬:上記の腎虚の処方に、五苓散(17)、猪苓湯(40)、真武湯(30)
などを併用

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と、まあ、ここまでが参考図書をもとに、
後鼻漏を五行説で考えた処方でした。

ただ、僕は別の発想で処方している場合もあります。
まあ、僕の場合は結構,症状⇒処方という単純なものが多いので、
これからもう少し上記のようなことも考えて処方しようと思います。

たとえば:
口腔乾燥感による唾液性後鼻漏感の場合
麦門冬湯(29)や白虎加人参湯(34)
また、慢性的な咳や痰を伴う場合
滋陰降火湯(93):や滋陰至宝湯(92)なども使ってみています。
(93):高齢者や体力が低下した方で、肌が浅黒く、日中よりも夜に咳が出て、のどが乾燥し、少量の切れにくい痰を伴う方
(92):体力が低下し、慢性的に咳、痰が続く人。胃腸弱め。加味逍遥散(24)を処方したくなる人(共通する構成生薬が多い)。

精神的にうつ傾向がある場合
半夏厚朴湯(16)、柴朴湯(96)
(うつ傾向がない場合にも使います)

GERD・LPRDが関与してそうな場合
六君子湯(43)、半夏厚朴湯(16)

サルコペニア・フレイルによる運動性後鼻漏感
人参養栄湯(108)

上咽頭炎が原因と思われれば⇒小柴胡湯加桔梗石膏(109)

副鼻腔炎でも比較的フレッシュな場合⇒葛根湯加川キュウ辛夷(2)

まあ、思いつくままに書いたので、抜けているかも。
また、その場で観てみると違う処方が出てくる場合もあります。