本:意識はいつ生まれるのか3

(今日もネタバレ結構あり。
これから読もうと思っている方はご注意下さい。)

”豊富な情報を元に何らかの統合をされた時に意識は生まれる”

では、意識は人間のどこにあるのか。
筆者は、脳の視床-皮質系だと考えます。

脳には大きく、視床-皮質系のニューロンの束と、
小脳を中心としたニューロンの束があります。

ニューロン、つまり神経の数は実は小脳の方が
圧倒的に多い(小脳800億個、視床-皮質系200億個)。
しかし、小脳が完全に切り離されても、
言葉や動作が滑らかでなくなる等の障害はあっても、
意識がなくなることはないのだそうです。

小脳はデジタルカメラと同じ様に、
ニューロンは一つの単位(モジュール)を形成するが、
それは並立したもので、
多くの情報を分かち合って一つのものになることはないのだと。

これに対して、視床-皮質系というのは、
どこかが刺激されると、
ちょうど水面にさざ波が伝わっていくように、
いろいろな場所に情報が伝わっていくのだそうです。

そして、筆者らはこの理論が正しいかどうか検討します。
そのための道具というのが、
経頭蓋磁気刺激法(Transcranial magnetic stimulation:TMS)
というものと、脳波の2つ。

TMSの原理自体は19世紀からすでにあって、
技術的には1985年にはできあがっているものです。
最近は耳鳴りの治療にも応用が試みられています。
これは、要は脳の中を磁力で刺激するものです。

つまり、脳を水たまりにたとえると、
そこに石をポチャンと投げ込むようなことをするのです。
その時に脳全体がどのような反応をするかを
脳波で記録するわけです。

もし、意識があるなら、
石を投げ込んだ場所から、
わずかにタイムラグを持ちながら、
波状的に色々な場所が活性化するはずだ!

そういう仮説をたてて実際に検査を行いました。
まずは健常人、そして昏睡状態の人にも検査してみたそうです。

結果は、現在の所想定通りだったとか。
TMSで刺激したニューロンの活動は、
健常人ではわずかなタイムラグを持ちながら、
色々な脳の領域に広がっていき、
さざ波が消えていく様に徐々にその刺激も消えていきます。

これに対して、深い睡眠時や、植物状態の場合は、
単純な反応、ボンと反応するか、全く反応がないか・・・
All or Nothingの反応しか返ってこなかったそうです。

また、健常人ほどの反応ではないけれども、
多少複雑性のある脳波が得られた人では、
その後意識が回復したというのです。

そういうわけで、
現在の所、筆者の提唱したこの「情報統合理論」が、
人間の意識を説明できる最も適切な説なのだそうです。

さて、もう1日この話を引っ張ります。