本:風邪の効用2

「風邪を引く」ということ、
あるいは、「風邪が治る」ということには、
さらに実はもう少し複雑な
心の機構が関与している場合があると筆者は言います。

心理現象としての風邪引きとは、
寒いと風邪を引く人がいるというが、寒いから風邪を引くのではなく、
寒いと風邪を引くという考えが、心が空虚になった時に、
フッと入った時に風邪を引くのだと言います。

逆に暖かいと風邪を引くと考える人は、
体が緩んだときにポカッと入り込んで、
そういう時に風邪を引くのだそうだ。

つまり、そういう「概念」が先にあって、
それに体が反応してしまうということかもしれません。

ただ、「寒いと風邪を引くと思い込んでいる」からといって、
実際にはそうそう風邪は引かないのだそうだ。
それは意識的だから。

普段から、「寒いと風邪を引くぞ」という意識があっても、
潜在意識に隙がないうちは風邪を引かないらしい。
「ハックション」などという時に、
「あっ、風邪を引いた」と思うと、すーっと入ってしまい、
そうすると風邪を引くのだと(p.98)。

「厚着をすると風邪を引く」と思っている母親にとっては、
子どもに厚着をさせればさせたで風邪を引き、
「薄着をすると風邪を引く」と思っている母親にとっては、
子どもに薄着をさせればさせたで風邪を引く。

つまり先に「風邪をひいた時の状態」が潜在意識にあって、
それに当てはまると思われた時に、
防御の合間をくぐってすべりこんできた時に風邪を引く。

潜在意識というのはすごく強力で、
風邪を引いたと潜在意識が思ってしまったら、
これを訂正するのは難しい。
いくら意識して、立ち向かっても意識は無意識には勝てない。

”風邪を治すと言って「何くそ」などと気張るのは風邪の引き方としては最低で、
そうやって風邪を育てている場合が少なくない。”(p.109)

筆者は他の病気でも同様のことがあると言う。
”なる前にはならないように心を充実することが要るけれども、
なってから気張るというのはよくない。
それは自分自身の心の抵抗で体を壊していくからです。
だから潜在意識の反抗ということを全然無視して、体だけ、
あるいは病気だけ治そうということは難しいのです。”(p.110)

病気に対して、頑張ってはいけない。
これは、昨日のこの本の紹介の時に掲げた伊藤桂一氏の解説:
”本書は、「闘病」という言葉に象徴される
現代の病気に対する考え方を一変させる。”
というのは、このあたりのことを踏まえてなのでしょう。

ただ、まあ、風邪程度であれば、この言葉は反面教師として、
心に留め置くことができるが、
ある程度深刻な病気の場合、
自分がその立場になったら果たして頑張らずにいられるかどうか。

では、病気に対して、どのように対処すべきなのか。
筆者は、「空想を方向づける」という言い方をしています。
そして、この空想の方向づけというのが一番大事な技術であると。

何のことやらわかりにくいのですが、
続きは明日。