京滋めまいカンファレンス:中枢性めまい

先週の土曜日は京滋めまいカンファレンスに出席してきました。

特別講演は、横浜市立脳卒中・神経脊椎センター副院長 城倉 健先生。
『神経内科からみためまい:中枢性めまいを中心に』

めまいは末梢性めまいと中枢性めまいに分けられます。
末梢性めまいは、
内耳(回転を感じる三半規管+重力や加速度を感じる耳石器)と
内耳の情報を脳に送る前庭神経の異常からくるめまいです。

中枢性めまいは、脳のめまい。
前庭神経が脳に入って上位に中継される前庭神経核と呼ばれるところや、
そうしたものを統合する小脳に異常が生じた時にめまいを生じます。

僕達耳鼻咽喉科医は、そうした経緯から、
多くのめまい疾患を診ています。

そんな日常のめまい診療で、一番気を遣うのが、
「中枢性のめまいではないか?」
という点です。

末梢性めまいは症状は激しいですが、
一部を除いて大概は回復します。
ただし、突発性難聴に伴うめまいなどは、
(めまいが軽くなっても難聴の回復は別問題であり、
これはこれで注意しなければいけませんが。)
それに対して、中枢性めまいは命に関わります。

さて、ここからが、城倉先生の講義内容。

末梢性めまいは眼振という眼の動きに注目して見てみると、
大きく分けて2つに分けられる。
良性発作性頭位めまい症(BPPV)の眼振と、
それ以外の末梢性めまいの眼振。

特にBPPVの後半規管型の眼振は回旋性で特徴的。
水平半規管型は、方向交代性眼振である。
それ以外の末梢性めまい、つまり、
メニエール病、前庭神経炎、突発性難聴、
その他の腫瘍、炎症等により内耳障害で生じる眼振は、
基本的に水平回旋混合性、定方向性の眼振。

・・・ま、これはめまいを診ている医師からすれば基本中の基本。
これはおさらいの様なものです。

それに対して中枢性のめまいは多彩です。
基本的には、縦向きの眼振は中枢性です。
これは、小脳が障害された時に、
小脳から耳石器にかかっている抑制がはずれて、
重力の影響が顕在化するからだと。
・・・このメカニズムについては、
どこかで昔、勉強したはずなのですけどちょっと忘れていました。

ややこしいのは、一見末梢性と同じ様な眼振が出る時です。
まあ、めまいの診療は眼振がすべてでなく、
中枢性の除外の基本は、
めまい以外の症状の有無をチェックすることです。
これは、城倉先生もやはりそうおっしゃっていましあt。

ただ、一見同じ様に見える水平回旋混合性の定方向性眼振でも、
よく診るとちょっと違う場合があると。

たとえば、末梢性前庭障害の場合は、
自発眼振も頭振後眼振も同一方向に眼振が生じるが、
Wallenberg症候群の急性期の様な場合は、
小脳の抑制が障害されるので、
頭振後眼振は眼振の方向が逆転する場合があるらしい。

また、頭位眼振検査における方向交代性眼振は、
一般的にはBPPVの水平半規管型にみられる眼振だが、
小脳の障害でも生じることがあると。
確かに、昔の教科書などには方向交代性眼振をみた場合は、
中枢性疾患を疑うという記載があった。
一見それだけだと、
末梢性と中枢性の違いを鑑別することができなくなり、困ってしまう。

城倉先生がおっしゃるには、
末梢性めまい(BPPV)の場合は、
速度蓄積機構(Velositu strage)があるので、頭位を変換させても、
その蓄積が放出されるまで眼振は減衰しながらも同じ方向が維持される。
つまりタイムラグがあるわけです。
これに対して、
中枢性-ここでは小脳の重力に対する抑制が障害された場合、
速度蓄積機構が障害されているので、
頭位を変換させた途端に眼振の向きは逆転するのだと。

クプラ結石症(Cuplolithiasis)の場合は、タイムラグが少ないから、
それでも鑑別に困るよなぁ~と思っていたのですが、
講演後、知り合いの先生に尋ねてみると、
それには、頭位を右下(あるいは左下)から反対側に、
一気に変換させるとよいのだとか。
僕は、今まで頭位眼振検査は、
右下⇒仰臥位⇒左下⇒仰臥位(あるいはその逆)に変換して、
眼振を確認していたのですが、
右下⇒左下のように一気に変換させた方が良いのだと知りました。
今回はこのことに気づいただけでも収穫でした。