花粉症・アレルギー性鼻炎の漢方3 本治

まずは、
花粉症・アレルギー性鼻炎の漢方1
花粉症・アレルギー性鼻炎の漢方2 標治
をお読みください。

「標治」に対して、「本治」の方は、ゆっくり時間をかけて
体質を変えていくことになります。
そして、この本治は、結構難しい。
(少なくとも僕にはそう思えます。
漢方を専門でやってらっしゃる方にとっては
そうでもないかもしれませんが。)

一般的には、体質改善の場合、
柴胡剤と呼ばれる、小柴胡湯、柴胡桂枝湯など「柴胡」が含まれている処方
(補中益気湯や加味逍遥散なども、広い意味で、柴胡剤に含まれます。)や、
当帰芍薬散や桂枝茯苓丸と言った、
「駆お血(くおけつ)剤」(「お}はやまいだれに「於」)と
呼ばれる薬剤を用いることが多いと思います「。

また、陰陽五行説と呼ばれる漢方理論を参考に
体質改善を行う場合もあります。
中医学ではこれをさらに深く推し進めて
弁証して処方を選択します。
gogyou
たとえば、
アレルギー性鼻炎はメインの症状は鼻です。
鼻は五行(木火土金水)では「肺」に属する臓器だそうです。
肺系とは、主に呼吸器系ですね。
そこで肺系が弱る原因は何かと考えます。

五行は木⇒火⇒土⇒金⇒水という順に影響を与えています。
臓器は肝⇒心⇒脾⇒肺⇒腎となります。
肺系が弱るのは脾系(漢方では消化機能)が弱ったからだと。
暴飲暴食、あるいは甘いものの摂取が多いと脾が弱り、
それがまわり回って、肺(鼻)に影響がでていると考えます。
先にでてきました「補中益気湯」は脾を整える処方でもあります。
その他、「黄耆建中湯」なども用いるそうです。

また、スギ花粉症の場合、発症は春です。
春は五行(木火土金水)では「肝」にあたります。
五行説によりますと、木(肝)は金(肺)を攻撃しやすくなります。
肝系というのは西洋医学の肝臓の働き以外に、
精神活動や筋肉の活動も含まれます。
「肝」の気が鬱滞して強くなったため「金」を攻撃するらしい。
すなわち、たまったストレス(肝)から鼻症状(肺)がでる
と考えるわけです。

「肝」が属する臓器は「目」です。
だからスギ花粉症は目がかゆくなりやすいと考えます。
前述の「加味逍遥散」は肝系の薬です。
実際に受験前にひどいアレルギー性鼻炎だった人が、
受験が終わった途端、症状がきれいによくなった人もいます。

ここまでくると、ちょっと概念的で難しいです。
僕は中医学は今ひとつ理解できていません。
でも、よく考えられた理論ではあります。

ただ、もし、花粉症で来院された患者さんに、
標治の薬と同時に本治の薬も処方したとして、
本治の薬の効果があったかどうかの判定は、
少なくとも1年先となります。
もちろんオフシーズンだけでもいいと思います。

いずれにしても長期間薬を飲んでいただいた結果、
花粉症が治った、もしくは軽くなったとしたら、
患者さんにとって頑張って飲んだ甲斐がありますが、
ほとんど変わりなく、
相変わらずひどい症状がでてしまうとすれば、
患者さんもがっかりです。

医療に「絶対」ということはありませんが、
絶対とまで行かなくても高確率で症状が改善するならば、
患者さんに何が何でも飲んでもらおうと思いますが、
今のところ不確定さが多い様に思うので、
僕は、中々本治の薬は積極的には出していません。

また、標治で使う薬とはいいましたが、
そうした処方でもしばらく飲んでいると体質が変わってくるのか、
治ってしまう場合もあるようです。
そういう時は、標治の薬と本治の薬が一致しているのでしょう。
僕は通年性のアレルギー性鼻炎の患者さんで、
一人そういう方に出会いました。

診察中でもちょっと鼻が刺激されると
すぐにくしゃみ・鼻水を連発する方がいらっしゃいましたが、
小青竜湯をずっと、2年くらいは飲まれたと思います。
いつ頃からか、ふっと来院されていないのに気づきました。
よその医院さんで診てもらっているのかなと思っていましたら、
ある日、久しぶりに当科を受診されました。
その時は風邪症状で受診されたのですが、
アレルギー性鼻炎のことを尋ねると、
最近はすっかり調子がいいとの返事をいただいたことがあります。

まあそんなわけで、
僕は基本的には標治の薬を中心に用いています。

ただ、ご希望の方には試しにまずは2週間(~場合によって1ヶ月)、
本治を狙った薬を処方する場合もあります。
もし、これで花粉症以外で、何か調子が良い様なことがあった場合は、
患者さんに続けてもうらうこともあります。
何か身体中で、他に調子がよいことがあった場合は、
その薬が身体にあっている可能性が強く、
そうすると花粉症が完治する可能性も上がってくると思います。