花粉症・アレルギー性鼻炎の漢方2 標治

前回、「花粉症・アレルギー性鼻炎の漢方1」では、
一般的によく使う漢方を書きました。
・小青竜湯
・麻黄附子細辛湯
・苓甘姜味辛夏仁湯
・越婢加朮湯
・虎龍湯

これらの処方は、「今、その時の症状をとる」薬です。
これを、漢方では「標治」と呼びます。

これに対して、根本的にアレルギー体質を改善して、
症状がでないようにしようという治療を「本治」と呼びます。

西洋医学では、抗アレルギー薬・抗ヒスタミン剤を用いて
症状をとるのが標治にあたり、
減感作療法や舌下免疫療法のような根本治療が本治にあたります。

こうした標治として使用する漢方は、
少々乱暴な考え方ですが、メインの症状を聞いて、
第一選択を「これ」と決めて、
とりあえずそれを飲んでみてもらって、
それで効果をみながら決めていくというやり方もできます。

(もちろん、麻黄剤(上記の苓甘姜味辛夏仁湯以外)は
循環系、泌尿器系、甲状腺機能亢進症などには、
禁忌もしくは慎重投与といった配慮は最低限行います。)

そうしたやり方以外に、
現在起こっている症状が、
どうして生じているかを漢方理論や中医学理論で考えて、
処方を選択する方法もあります。
これを「弁証」と呼びます。

漢方、特に古方派と呼ばれる派は、
傷寒論(しょうかんろん)や金匱要略(きんきようりゃく)
という古典を重視した派ですが、
この古方派は、病気の成り立ちを「気・血・水」という概念や、
「表裏」「寒熱」「虚実」という概念
(八綱弁証(はっこうべんしょう)と言います)
で主に観察します。

「うすい鼻水がたくさん出る」というのは、
「気・血・水」の概念では「水毒(水滞)」と考えます。
水が滞っていると考えるわけです。
上記の漢方薬はいずれも、滞った水をさばく薬です。

苓甘姜味辛夏仁湯は小青竜湯の裏処方と書きました。
前者は「裏寒虚」というグループに属します。
病気の主戦場が身体の奥の方で、体質は寒がり、
体格は比較的ひょろっとしている方に有効と考えます。
後者は、「表寒虚(実)」です。
病気の主戦場は身体の皮膚に近い部分で、
体質は寒がり、体格は中肉中背です。

麻黄附子細辛湯も「表寒虚」に属する処方ですが、
「気・血・水」の考え方では、
水毒に加え気虚(エネルギー不足)が使用目標です。

(「表裏」は中々わかりにく概念です。
おもに急性期の感染症などで検討する概念で、
ここでは置いておきましょう。)

「寒熱」も中々難しい概念ですが、
患者さんの体質が暑がり・寒がりとここではしておきましょう。
ですので、風邪の初期のゾクゾクっとした時で、
薄い鼻水がよく出る場合にも効果的だと思います。

これに対して、越婢加朮湯や麻杏甘石湯・五虎湯は、
「表熱実」グループに属します。