Long-COVIDに関する論文2

前回は、Long-COIVDと腸内の真菌が関連があるのでは?という話でしたが、
今回は、Long-COIVDとビタミンDとの関連です。

Low Vitamin D Levels Are Associated With Long COVID Syndrome in COVID-19 Survivors
(COVID-19生存者における低ビタミンDレベルは長いCOVID症候群と関連する)”

The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 108, Issue 10, October 2023, Pages e1106-e1116:


対象は、COVID-19と確定診断された成人患者(年齢18歳以上)のうち、
2020年3月から5月までの第1次パンデミックの流行期に
IRCCS Ospedale San Raffaeleに入院し、その後退院し、
退院後6ヵ月後に同施設のCOVID-19フォローアップ外来で再評価を受けた患者:
(1)ビタミンD代謝に影響を及ぼす併存疾患(慢性腎臓病、骨粗鬆症)および治療薬(慢性グルココルチコイド、抗てんかん薬治療、ビタミンD/カルシウムサプリメント、ループ/サイアザイド系利尿薬など)を使用している人は除外
(2)在宅管理のみであった患者、および入院中にICUに入院した患者は除外
(軽症すぎの人、重症すぎの人は除外したということだと思います)
(3)入院時および6ヵ月追跡時に記録された医療データが入手可能な患者
(4)入院時および6ヵ月追跡時に採取された25(OH)ビタミンD測定のための血液サンプルが入手可能な患者

Long-COIVDの診断は、6ヵ月の経過観察時に
体質:無力症、発熱、筋肉痛、関節痛
心肺:咳嗽、呼吸困難、胸痛
消化器:腹痛、吐き気/嘔吐、 下痢、
神経認知:頭痛、脳霧/錯乱、
耳鼻咽喉:咽頭痛、鼻漏、耳痛
感覚領域:嗅覚低下、味覚異常
こうした症状・徴候を少なくとも2つ以上有していて、
他の医学的診断では説明できず、
以前のCOVID-19に起因するとしか考えられない場合としたそうです。

結果:
追跡調査時に評価した25(OH)ビタミンD濃度は、
Long-COIVDの人は、そうでない被験者より低いことが観察されました。
(20.1 vs 23.2ng/mL、P = 0.03)

特に、神経認知症状を呈した患者さんで顕著だったそうです。
(14.6 vs 20.6 ng/mL、P = 0.042)

そしてこの追跡調査時の25(OH)ビタミンD値の低値は、
この研究におけるLong-COVIDと有意に関連する
唯一の変数であったとのこと。

ビタミンDというと、骨の代謝がすぐに思い浮かびますが、
自然免疫と適応免疫の両方に関する免疫反応と免疫能を調節し、
抗菌および抗ウィルス免疫反応をサポートすることが
よく知られているそうです。
(このあたりもう少し勉強したいと思います)

この論文の考察では、
さらに、入院時にビタミンD濃度が低かった患者の3分の2は、
6ヵ月後の追跡調査でもビタミンD低値を示していたそうです。
ただ、25(OH)ビタミンD値の差に疾患の重症度が影響していることを
支持するものではなかったとも書いてありました。

6ヶ月後にLong-COIVDの症状を呈していた人たちの
ビタミンD濃度が低いのは、
著者らは、一つの可能性として、
Long-COIVD患者では炎症が持続することで、
ビタミンD結合蛋白が消耗し、
その結果25(OH)ビタミンD濃度が低下しているのではないか
と考察しています。

そして、もし大規模な介入ランダム化比較試験で確認されれば、
ビタミンD補充はCOVID-19の後遺症の負担を軽減する
予防戦略の可能性を示唆していると締めくくっています。