聴覚過敏について(総論)

Q&Aコーナーに聴覚過敏についてのご質問があったので、
これを機会に、考えをまとめてみました。

当院ホームページ「耳の病気」の症状の欄に簡単に書いてありますが、
もう少し詳しく書きたいと思います。

まず、聴覚過敏の定義ですが、
きこえてくる音が響いて聞こえる症状を言いますが、
自声強調(Autophonia:自分の声が響く)は耳管・中耳あるいは外耳の疾患で
生じるもので、聴覚過敏とは分けて考えます。

聴覚過敏の定義ははっきりと決まっているわけではありませんが、
・Loudness perception disorder(音量に対する認知障害)
・Reduced Loudness Tolerance(音耐性の減弱)
などと表現されています。
医学用語ではHyperacusisが対訳として用いられる場合が多いと思いますが、
その他、Phonophobia・Misophonia(音恐怖)なども使われます。

聴覚過敏は、内耳障害の時に多いですが、
顔面神経麻痺の時や、偏頭痛の際にも出現することがあります。

こうしたことを踏まえて、私はメカニズムから原因を3つに分類しています。
1.耳小骨筋反射・鼓膜張筋反射の異常
聴覚の精細な仕事として、強大な音が耳に入ってきた時に、
鼓膜を緊張させたり、耳小骨の音の伝わりを抑制させて、
強大な音が内耳に入って聴覚の細胞(有毛細胞)が壊れないように
するシステム(反射)があります。
この反射がうまく行かなくなると、大きな音が内耳にダイレクトに
飛び込んでくるので音が響きます。
顔面神経麻痺の際に生じる聴覚過敏はこれにあたります。

2.内耳の反応異常
内耳の外有毛細胞が障害されると、音の強弱に対する
内有毛細胞(音を電気信号に変換して脳に情報を送る細胞)の
調節がうまくいかなくなります。
補充現象(Recruitment)とも呼ばれます。
音の強さがわずかに増強した際に、
音の受け取り方が異常に増大する現象と表現されます。

3.聴覚野での感度の上昇
これは推測の域を超えませんが、脳での感度が上がる場合が
あると思います。偏頭痛に関連する聴覚過敏はこれだと考えます。

検査については、明日にします。