本:オキシトシンがつくる絆社会1

”とび太くんを探せ”シリーズをもっと続けたいところなのですが、
今回は以前読んだ本をもとに考えるていることをお話します。
(まだまだゲットしたとび太くんはありますので続きは近いうちに)

『オキシトシンがつくる絆社会: 安らぎと結びつきのホルモン』
シャスティン・ウヴネース モベリ  著,  大田 康江 翻訳,  井上裕美 監訳,晶文社


僕が大学時代に習った時には、
オキシトシンというのは
子宮収縮と乳汁分泌に関係するホルモンでした。

ところが近年、
このオキシトシンが社会性と関連があると言われています。
というのは、オキシトシンはホルモンとして働く以外に
脳内の神経伝達物質としても働くそうなのです。

もともとオキシトシンは脳下垂体後葉と呼ばれる部分から
血液中にホルモンとして分泌されます(内分泌)。
これが古典的なオキシトシン。
陣痛中の子宮収縮や授乳中の射乳に影響を与えます。

このオキシトシンは脳下垂体後葉で作られるのではく、
視床下部の視索上核と室傍核という部分に存在する
オキシトシンを産生する神経細胞から分泌されています。

そして、この細胞は脳下垂体後葉以外にも、
脳内のいろいろなところに神経の樹状突起を伸ばしていて、
こちらでは神経伝達物質として働くそうなのです。

さらにさらに、もう一つ、オキシトシンは
産生細胞から周囲に直接放出されるものもあるそうで、
周囲のオキシトシン濃度が上がることで、
周辺組織にいろいろな影響を与えるそうで、
これを「パラクリン効果」と呼びます。


子宮収縮・射乳以外の生理作用をざっとあげるとすると(p.77)
1.下垂体後葉⇒血中⇒副腎へ
2.下垂体前葉⇒成長ホルモンやプロラクチンの放出を刺激しACTHの放出を抑制
3.嗅覚に影響
4.海馬:記憶や学習、HPA軸の調節
5.偏桃体:恐怖や社会的交流を調整
6.中脳水道周囲灰白質:疼痛や炎症の統制センター
7.ほかの視床下部領域:ストレス、食欲や体液の調節センター
8.縫線核:セロトニン産生、気分に関連した核
9.青斑核:ノルエピネフリン産生、敏捷性のレベルや攻撃に重要
10.中脳黒質:ドーパミン産生、報酬系と同様に集中力や動作に重要なセンター
11.迷走神経領域:副交感神経系の迷走神経線維と交感神経系の機能のスイッチを入れるセンターに
12.脊髄:特に疼痛の伝達に関与する領域と交換神経系のスイッチを入れる神経線維に

また、内因性オピオイド(エンドルフィンやエンケファリンなどの
脳内モルヒネとも言われている鎮痛物質)も
オキシトシンが分泌されると豊富に出てくるそうです。

そういえば、昔、春山茂雄さんの『脳内革命』という本がはやったころ、
嫁さんが歯が痛くなったことがあって、
「脳内モルヒネがでるからいいかも♪」なんてジョークを言ったら、
激しく怒られて、しかもその2週間後に自分も同じように歯が痛くなって、
結局親知らずが隣の歯を押して歯根膜炎を起こしていたらしく、
ものすごい顔面の痛みに襲われ、
嫁さんからは「あんなこと言うからバチがあたったのよ」と反撃され、
深く反省した苦い経験がありました。
この時は確かにバチがあたったと思いました。

話をオキシトシンに戻しましょう。
このオキシトシンの分泌が高まるのは、
一つは赤ちゃんが生まれてくるときに母親の産道をこじ開けようとするとき。
そして生まれた後、母乳を吸おうとするときです。

そして、その後の母親と赤ちゃんが見つめあったときなども
オキシトシンの分泌は増加するらしく、
さらにこうした母親と赤ちゃんの間のコミュニケーションが、
赤ちゃんのその後の社会性にも影響を与えるそうなのです。

続きは次回