本:「安心のタネ」の育て方

前回、ざっとポリヴェーガル理論についておさらいをしました。

この理論を診療に活かすことができるのか?
実生活で何をすればいいのか。
本当はそこにまで落とし込むことができればいいのですが、
何となく本を読んだだけで満足していました。

『「安心のタネ」の育て方』 浅井咲子,大和出版

近年ストレスフルの社会で生きていくのに
多くの人が不安や息苦しさを感じています。
そんな中を生きていくのに役立つ、
実践的な47個のコツがこの本には書かれています。

しかも、前回も書きましたが、
ポリヴェーガル理論についての知識があまりなくても
ワークを実践するだけで
生活の上での精神的な安定が得られやすくなるようになっています。

この本では、まず「はじめに」のところで、
「安心」について触れています。
安心とは”個人の主観に基づく、人との関係性や環境への信頼感覚”
と定義し、さらに、この「安心」を得るためには、
神経に「安心の土台」を育む必要があるというのです。

この土台があってこそ、
色々な社会的な行動が行えたり、
健康を健やかに保ったりできるのだと言います(p.005-006)。

この土台が「安心のタネ」で、
これを育てることが大切なんだそうですが、
それをわかりやすいコツとして紹介しています。

ここで面白いというか、うまいなぁと思うのは、
迷走神経の活性化を「スイッチ」と呼んだところです。

前回、副交感神経の中で大きなウエイトを占める迷走神経には
腹側迷走神経と背側迷走神経があると書きましたが、
筆者は他者と心地よくつながる時に活性化される
腹側迷走神経を「フロントスイッチ」と呼び、
背側迷走神経の中で、一人でいるときに休息と消化に
関連する部分を「バックスイッチ」と呼んでいます。

※背側迷走神経にはもう一つ
「凍りつき」(急ブレーキ)に関する部分もあります。
僕は以前ブログではこちらしか注目していなかったのですが、
どうやらこの急ブレーキを使わなくても良い様にするために、
フロントスイッチとバックスイッチを育てないといけないのだそうです。

ところが、この2つのスイッチがうまく使えないために、
急ブレーキとアクセル(交感神経)ばかりを使って疲弊しているのが
現代人なんだと筆者は言います。

このスイッチを育てるのには順番があります。
まずはバックスイッチが先なのだそうです。
他者とつながってくつろぐ前に、
まずは自分一人で気を使わず安心することが大切だと。
一人の時間が充実してこそ他者とのふれあいができるわけです。

というわけで、この本では、安心のタネを育てるために、
18個のバックスイッチのコツと
29個のフロントスイッチのコツが紹介されています。
僕が気に入ったコツをいくつか上げておきます。

<バックスイッチ>
・お腹を手のひらで温める

・夕日を眺める
これは言われるまでもなく好きです。

・”ゆっくり動くもの”を見る
シャンパンや炭酸水の泡なんかでもいいらしいです。

<フロントスイッチ>
・目や眉を動かす
社会的なつながりは表情から始まります。
特に現在はマスク着用ですので
この目や眉をしっかり動かすことは大切です。

・抑揚をつけて話す
これは、僕も以前ブログで、
アニメの声優さんの声をマネして発声してみる
というのを書いています。

・「べー」っと舌を出す
これは誤嚥性肺炎の予防によいとされる「あいうべ体操」にも
つながりますね。

・ぬいぐるみの目をみつめる
人の目を見て話すのはコミュニケーションの基本だと言われますが、
でもこれ、僕も苦手です。
そうした目を見るのが苦手な人は
まずはぬいぐるみから始めましょうというわけです。

・遠くの音に耳を傾ける
これは耳鳴りに集中してしまう方にもオススメです。

こうしたコツが47個書いてあります。
どれも結構手軽にできることです。
本当にこんなことで役に立つの?と思われるかもしれませんが、
結構いいと思います。

ご興味もたれた方は本書をお読み下さい。