『腸と脳』第3部 脳腸相関の健康のために 第8章 食の役割2

食習慣で失われたものを取り戻すためにはどうすればよいのか?
そのキーワードは多様性。

数百万年にわたり、私たちの消化器系、腸内微生物、脳は、
共進化を遂げ、健康に良い食物を探索、収穫、調理し、
健康に悪いものを回避する直感的能力を磨き上げてきました。

人類はとてつもなく多様な食習慣に対応できます。
世界各地の伝統社会では、
実に多様な食習慣がこれまで何代にもわたって維持されてきました。
消化器系の多様性のゆえに、
人類は気候や環境が著しく異なるさまざまな地域で、
生存に必要な食物を見つけることができたのだと筆者は言います。

この食習慣の多様性を支えてきたのが、
腸内のマイクロバイオータです。
私たちの食習慣が劇的が変わっても、
腸内微生物が分解して代謝物質を変えることで適応してきました。
これは腸に埋め込まれた進化の知恵の一つです。。

しかし、人工甘味料、乳化剤、香味料、着色料など、
新しく生まれた物質には、腸内微生物の方もまだまだ
適応が追いつきません。

さらに、現在、生態学者は、
世界中で生物多様性が低下してきていることを指摘しています。
こうした多様性の低下が、生態系の荒廃をもたらしていると。

自然界の生物多様性が失われると、
生態系の荒廃からの回復力も落ちてきます。
それは、人体におけるマイクロバイオータでも同じです。

腸内微生物の多様性や豊かさは、
感染、抗生物質、さまざまな食品添加物、発がん性の化学物質、
慢性ストレスに対抗する回復力の向上に結びつくのだそうです。

狩猟採取民族などと比較すると、
典型的なアメリカ的な食生活が身についている人は、
先史時代の生活様式を維持する人々に比べて、
腸内微生物の多様性が最大で3分の1ほどにまで
失われているそうです。

日本人がどうかは資料を探していないのでわかりませんが、
アメリカ人ほどではないけれども、
食の欧米化に伴い多様性は減ってきていることでしょう。

次回につづく