本:ポリヴェーガル理論入門3 社会交流システム

ニューロセプションとは、
「安全」「危険」「生命の危機」を察知し、それにふさわしい、
自律神経の神経回路を選択する反射的なシステムといえます。

このニューロセプションを引き起こす時には、
さまざま「合図」を受けとり身体は反応します。
この「合図」の中で最も重要なのが聴覚刺激なのだそうです。

特に、「安全である」かどうかを判断するのに、
聴覚刺激が非常に重要な役割を果たしているのだそうです。

「安全である」と判断しやすい音としては、
母親が子どもをあやす時の声、あるいは母親の子守歌。
伝統的な民族音楽やラブソングなど・・・
これらに共通するのは、低周波数の音を使用せず、
高周波数の音を積極的に用いていることなのだそうです。

太古の時代、弱肉強食の時代は、
危険を察知することが生き延びるための重要な能力でした。
そこでは、捕食動物というのは、
低い周波数を持ってることが多かった様です。
このため低周波数の音は敵(捕食動物)がイメージされ、
防衛反応を引き起こしやすくなるのだそうです。

プロコフィエフ作曲のクラシック音楽『ピーターと狼』という曲では、
友好的なキャラクターはヴァイオリン、クラリネット、フルート、オーボエで
表現されており、比較的高周波数の音色を有しているのに対して、
捕食動物は低い周波数で表現されてあるのだそうです。
『ピーターと狼』

つまり、周囲の状況に注意する時には、周囲に捕食動物がいないかと、
低い音を中心に気を配っているわけです。

そして、聴覚刺激とともにもう一つ重要なのが、
顔の表情や身振りです。

安全な環境のもとでは私たちは、
顔の表情や身振り、声の韻律(調子)で、
情報を即座に処理し、
相手がその時どんな状態であるかを察知します。

声の韻律の中でも、特に抑揚に耳を傾けると、
その人の生理学的な状態が読み取れると筆者は言います。
電話で相手の声を聴いただけでも、
調子がいいかどうか、うれしいのか怒っているのとか、
我々はある程度推測することができる場合がありますよね。

発声する人が生理学的な状態が穏やかだと、声は旋律を持ち、
それを聴いていると聴いている方も落ち着いてきます。
顔の表情や身振り手振りでも同じです。
にこやかな落ち着いた表情であれば、こちらも居心地はいい。
緊迫した表情をしていれば、何かあったかと思います。
こうして我々は他の人とコミュニケーションをとってるわけです。

こうしてコミュニケーションをとる方法を、
ポリヴェーガル理論では「社会交流システム」と呼んでいます。

発声と聴くことの関係については、もう一つの側面があると言います。
哺乳類が構文や言語を獲得するずっと前から発声はあり、
発声は社会交流の大切な要素だったそうです。
哺乳類たちは、ある存在について、
近づいていって安全か危険かを声を通して
同種の仲間に知らせることができます。
それは「言葉で」ではありません。

これって、以前ちょこっとお話したことがある、
「メラビアンの法則」
に通じる話ですね。
本:声 ~記号に取り残されたもの~2

我々は言葉だけでなく、
というよりは言葉以上のものを言葉以外から、
察知(ニューロセプション)し、
社会交流システムを用いて、
「安全」「危険」「生命の危機」を反射的に判断しているわけです。