本:ポリヴェーガル理論入門2 ニューロセプション 

昨日からの続き

こうした自律神経の複雑性を著者のポージェス博士は、
最初、新生児の心拍の変動を研究していて見つけたのだそうです。
そしてPTSDや自閉症などのセラピストの人たちが、
この理論に注目したことから、
このポリヴェーガル理論を発展させるきっかけになった様です。

それまでは、従来の自律神経の防衛システムは、
危険が迫った時に闘争/逃走反応が
唯一の防衛反応だと考えられていました。

しかし、それは「可動化」できる場合の反応であり、
戦うことも逃げることもできず、
物理的に自己防衛行動をとることが不可能な場合には、
闘争/逃走反応は適応的ではなくなります。

こうした場合、ポリヴェーガル理論では、
「不動化」「シャットダウン」および「解離」というタイプの
防御システムをとるということは昨日もお話しました。

このような不動化をもたらす防御システムは、
従来のストレス理論では説明できないものでした。
こうした反応は、意図的な意思決定下に起きるのではなく、
意識の外で起きるものと考えられます。
そして、この反応に最も関与するのが、
発生学的に最も古い、無髄の迷走神経なのです。

この「不動化(凍り付き)」という反応こそが、
トラウマに対する反応だとセラピストたちは気がついたのでした。

この反応のスイッチが入るタイミングは、人によってまちまち。
同じ状況であっても、闘争/逃走反応で防衛する人もいれば、
不動化の防衛反応をとる人もいます。

ですから、トラウマ治療を行う場合に、
「どのようなトラウマ的な出来事が起きたか」は問題ではなく、
その人がその状況で「どのように反応したのか」を理解することが
もっとも大切になってくるのだそうです。

「どのように反応したのか」というのは、
神経回路は、「安全」「危険」「生命の危機」をどのように察知し、
それにふさわしい神経回路にスイッチを入れたか、ということです。

この、スイッチを入れるきっかけを、
ポリヴェーガル理論では「合図」と呼ぶそうです。
そして、「合図」をもとに、ふさわしい神経回路にスイッチをいれ、
適応した自律神経系の状態をもたらすことを
「ニューロセプション」と呼びます。

このニューロセプションは、
意識して行う「知覚」とは全く異なるもので、
むしろ意識しない反射の様なものなのだそうです。

だから、トラウマを受けた人が、
目の前で何となく似たような情景を目にした場合、
自覚的に似ていると判断する前に、
身体の方が、ニューロセプションを引き起こし、
自律神経を過去に経験した防衛状態に引き戻し、
嫌な自律神経症状を自動的に発現させるわけです。
これがフラッシュバックであり、PTSDなんだと思います。

この防衛反応には一つ問題点があります。
それは、この神経系には、
「不動状態」からうまく抜け出す経路がないということです。