2018.11.17-18 日本耳鼻咽喉科専門医講習会

いろいろと書きたいことがあって、
ゆっくり記事を書いていたら、
月日はどんどんたって行きます。

すでに12月も半ばで、
今年を振り返る時期になってきました。

と、その前に、11/17-18に博多で開催された、
日本耳鼻咽喉科学会専門医講習会のレポートを。

と言っても、実際には土曜日は診療を終わってから
新幹線に乗り込みますので、その日は移動だけ。
結局日曜日の講義を受講しただけになりました。

その中から一つだけ、自分の備忘録として;
『診療に役立つ聴覚メカニズム』
講師は東北大学 川瀬哲明先生

聴覚系の障害が外耳・中耳の異常に伴う伝音性難聴と
内耳及び聴神経等の異常に伴う感音性難聴があることは、
教科書的な事実ですが、
今回は内耳のより細かな障害部位による違いや、
音声の中枢での処理の異常についてもお話いただきました。

<外有毛細胞の障害>
・外有毛細胞は蝸牛の基底板振動の局所的増幅を介して
内有毛細胞ー蝸牛神経における音受容の感度上昇と
良好な周波数選択性の形成に寄与
⇒外有毛細胞の障害では、50dB程度の聴力閾値の上昇と、
易マスキング性=雑音下での聞き取りが低下
補充現象陽性(=古典的な内耳障害の特徴)

<内有毛細胞の障害>
・内有毛細胞ー蝸牛神経におけるスパイク発火の同期が乱れる
純音聴力検査やOAEは異常が小さいにもかかわらず、
ABRの反応が極端に悪くなる
=ABRの一つ一つの波形はしっかりでるのだが、
同期が乱れているため加算されると平坦になってしまう。
実際の純音聴力検査に比べ、語音聴力検査が極端に悪くなる

<Hidden Hearing Loss>
内有毛細胞につながるシナプスには反応様式で3つに分けられる。
小さな音に反応するがある程度大きさになると飽和してしまう群と、
中等度・大きな音に柔軟に反応する群。
このうち、聴力が戻る程度の大きな音を聞いた場合などで、
一過性に聴力障害をきたした後などに、中等度・高度反応群の
シナプスが減ってしまうことがある。
聴力閾値は正常だが、ABRでの振幅の低下や、
マスキング下でので聞き取りが悪くなる。

<聴覚情景分析能の障害>
末梢から入力された音情報は、中枢でさまざまな処理がなされ、
どこからどのような音情報が入ってきたか分析的に知覚、認知される。
この聴覚情景分析能が障害されると、
雑音下や多人数の会話など、聴覚的に負荷のかかった条件では
聞き取りにくさを自覚する。
=聴覚情報処理障害(Auditory Processing Disorder: APD)
通常の聴力検査では異常を認めないが、
両耳分離能や両耳合成能など中枢聴覚機能検査や
雑音下の聴覚機能検査で異常が検出されることが少なくない

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無難聴性耳鳴や聴力検査で異常がみられないのに
聞き取りにくいと言われる方は結構いらっしゃいます。
こうしたものの中に上のような病態が潜んでいる
可能性が考えられるそうです。

ただ、最後に出てきたような中枢聴覚機能検査などは、
一般にできるところは少なく、やっているところも、
独自の施設で基準を作って行っているのが現状で、
まだまだ標準化された検査にはなっていないそうです。