僕が医師になるまで35

滋賀医大の耳鼻咽喉科の教授に話を聞きに行く。

昔はインターネットなどありません。
どこに滋賀医大があるかもよく知りません。
JR瀬田駅で滋賀医大行きのバスに乗ればいいということだけ、
何とか調べてやってきました、JR瀬田駅。
そこで滋賀医大行きのバスを探して乗り込みました。

バスは、徐々に坂を上っていきます。
そのうちに、周りに家がなくなり林ばかりです。
まあ、高知医大も高知駅からは
30分くらいバスに乗って行かなければならず、
周りは田んぼだらけでしたが、
滋賀医大は最終的には家一軒ありません。
「えらい山の中にあるんだなぁ」
それが滋賀医大の第一印象でした。

そのあと、
当時教授であった北原正章先生にお会いしました。

入局してから、北原先生が怖い先生だと聞いて、
(本当は厳しいだけで怖い先生ではないのですが)
研修医としては、相当にびびることになるのですが、
それはまだ少し先の話。
その時にはそこまで緊張はしていなかった様に思うのですが、

それでも、さすがに教授と初対面、
多少は緊張していたのでしょうね、
何を話ししたかほとんど覚えていません。
まあ、普通に耳鼻咽喉科を志す理由とか、
滋賀に戻りたい理由などを話したのだと思います。

そうして、何とか面接を終えました。

後日、医局長の先生から電話をいただきました。
「もし僕に入局の意思があるなら来なさい」
と北原先生が言って下さったとのこと。

そこで即答できないのが僕のダメなところなんです。
数日猶予をいただき、ウダウダと考え迷いました。

といっても、特に具体的に何かと何かを迷うとかではなくて、
「どうしようかな、このままこうして決めちゃっていいのかな」
といった不安というか、
将来をこれで決定することに対して、
自分で責任をとるのが何となく重かったのでしょうね。

数日、なんとなく決断を引き延ばしていたら、
再度医局長の先生から電話をもらいました。
「板谷くん、どうする?」
「はい、そのう・・・」
その場でもまだ、ウジウジしています。
その時、最終的に、
「時には思い切った決断ができないとダメだよ」
という言葉に背中を押されて、
僕は滋賀医大への入局を決めたのでした。

そういえば、僕が開業を決める時にも、義父から、
「勇気と決断が大切だよ」
と言われたことがありました。
「勇気と決断」・・・実は僕の苦手とするところなんです。