本:夜中にジャムを煮る

今年最初に読んだ本がこれ。

『夜中にジャムを煮る』 平松洋子,新潮社

以前、嫁さんが留守の時に大量のイチジクが届いて、
結局なんとか自分で煮てジャムにした話を書きました。
はてさてどうしたものか・・・
はてさてどうしたものか・・・2
真夜中にジャム作り

この話を書いた時に、嫁さんが言ってました。
「そういえば、『夜中にジャムを煮る』という本があるわよ」
そのことを覚えていて、
年末にこの本を図書館から借りてきてくれたのでした。

著者の平松洋子さんの経歴
フードジャーナリストでエッセイストとあります。
それだけに、食に関する文章がすごく読みやすい。

この本のタイトルにもなった、
「夜中にジャムを煮る」という章、:
最初は果物の旬を見極めるのって難しい、
という話が書いてあります。

うちの家では、嫁さんのおじさんが梨農家をやっていて、
時々梨を送ってくれます。
また、嫁さんの実家が岡山なものですから、
白桃も時々家で食べます。
そのとき、嫁さんもよく言ってました。
果物の食べ頃を見極めるのって難しいのよね、と。

この章にも書いてましたが、
特に洋梨ラ・フランスは難しい。
ちょっと早いとガジガジで美味しくないし、
ちょっと油断するとグズグズに崩れてきてしまう。
嫁さんもおんなじことを言ってました。

そして、後半、
果物の一番幸福な時間を止める方法として、
ジャムを作るに至った話が登場します。

その文章の一部を抜粋:
”そんなことがわかってきたら、ジャムを煮るのがなんでもなくなった。くだものがあまりそうなら、さっさと煮る。たくさんいただきものをしたら、まず半分ジャムにする。
(中略)
もうひとつ、密かなたのしみを覚えた。ジャムは夜更けの静けさのなかで煮る。
世界がすっかり闇に包まれて、しんと音を失った夜。さっと洗ってへたをとったいちごをいまるごと小鍋に入れ、砂糖といっしょに火をかける。ただそれだけ。すると、夜のしじまのなかに甘美な香りが混じりはじめる。暗闇と静寂のなかでゆっくるとろけてゆく果実をひとり占めにして、胸いっぱいに幸福感が満ちる。(以下略)”(P.060)

ま、僕がイチジクのジャムを作った時には
そんな幸福感を感じる余裕はありませんでしたが、
確かに、真夜中にイチジクを煮ていて、
甘酸っぱい香りが部屋に充満するのは、
なんとなくちょっとワクワクする様な
そんなこころよさがあったかもしれません。