加齢性難聴と動脈硬化2

昨日からの続き。
動脈硬化と加齢性難聴についての論文。

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『愛媛大学附属病院における抗加齢ドックおよび聴力ドック
三瀬和代 他,Audiology Japan Vol. 53, No. 5 2010 (愛媛大学)

1)抗加齢ドック
一般の人間ドックとは異なり、
動脈硬化性疾患の診断に特化した臨床検査を行っている。
一般測定(身長・体重・体脂肪・血圧等)、
血液・生化学検査(脂質代謝・糖代謝・肝機能・腎機能・甲状腺機能など)、
心電図、呼吸機能、脈波伝播速度(PWV)、頸動脈エコー(IMT)、
重心動揺、頭部MRI、認知機能など

2)聴力ドック
問診(耳疾患の既往歴・ドック受診理由)、
純音聴力検査、DPOAE および、医師による診察とカウンセリング

聴力とPWV との関連については、
周波数4KHz と8KHz において有意な相関を認めた

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『愛媛大学病院における抗加齢ドックおよび聴力ドック第2 報
-聴力に対する動脈硬化・糖代謝の関与-』
三瀬和代 他,Audiology Japan Vol. 54, No. 5 2011 (愛媛大学)

重回帰分析の結果、
年齢と耳疾患の有無で調整してもなお有意であったのは、
HbA1c では4KHz の聴力と、
IMT は125,1K,2K,4K,8KHz の聴力との関連であった。
PWV ではいずれの周波数の聴力とも有意な関連は認められなかった。

<聴力に影響するリスク因子>
虚血性心疾患、糖尿病など全身性基礎疾患が
難聴の進行に関与するという報告(内田2004)

動脈硬化は加齢による聴力低下に関与する(下方2008)

今回、この聴力ドックでのデータをもとに解析したところ
HbA1c およびIMT 測定値と聴力で有意な関連が認められ、
これまでの報告と同様に
糖代謝異常や動脈硬化は聴力に影響する要因であることが示された。

特に、動脈硬化の影響が大きく、動脈硬化の指標としては
IMT がより聴力との関連を反映し易いことが示唆された。

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『愛媛大学病院における抗加齢ドックおよび聴力ドック第3 報
-聴力とその性差に対する動脈硬化の関与についての検討-』
三瀬和代 他,Audiology Japan Vol. 55, No. 5 2012 (愛媛大学)

重回帰分析では、年齢で調整してもなお有意であったのはIMT 値であり、
1~8kHz の聴力と有意な関連が認められた。

IMT 値の性差は全体で男性が有意に悪く、
年代別の検討では60 代と70 代で男性が有意に悪かった。

りIMT 測定値と聴力で有意な関連が認められ、
特に高音域聴力との関連が強いという結果が再現された。

60,70 代において、IMT 平均値よりも高値群で、
60 代は4kHz、70 代では4,8kHz の聴力が有意に低下していた。

男性の高音域聴力の低下には、
やはり動脈硬化が影響していると考えられた。

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『愛媛大学病院における抗加齢ドックおよび聴力ドック第4 報
-聴力性差と動脈硬化-』
三瀬和代 他,Audiology Japan Vol. 56, No. 5 2013 (愛媛大学)

(前回まで)
高音域聴力低下を特徴とする加齢性難聴の進行に動脈硬化が関与している
動脈硬化の指標としてはPWV よりもIMTの方が聴力との関連を反映しやすい

聴力の男女差についても検討し,4000,
8000Hz の聴力で男性の方が悪く,
これらの結果から男性の高音域聴力の低下に対する動脈硬化の関与を推察した

(今回)
聴力の性差に関する検討では,
男性は40 歳代の4000Hz,60,70 歳代の4000Hz,8000Hzで
女性と比べ聴力は有意に悪かった。

男性ではIMT で4000Hz と8000Hz における聴力レベルと
有意な関連を認めたが,
女性ではいずれの周波数の聴力レベルとも有意な関連を認めなかった

加齢に伴う高音域聴力低下は女性よりも男性で大きく,
男性の高音域聴力低下の要因の一つとして動脈硬化の関与が示唆された。

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『愛媛大学病院における抗加齢ドックおよび聴力ドック第5 報
―聴力性差における騒音暴露歴と動脈硬化の影響―』
三瀬和代 他,Audiology Japan Vol. 57, No. 5 2014 (愛媛大学)

職業性騒音暴露歴の有無では、やはり男性の方が有意に多かった。

重回帰分析の結果、
男性ではIMT 値で4000 Hzと8000 Hz における聴力レベルと
有意な関連を認めたが、
女性ではいずれの周波数の聴力レベルとも有意な関連は認めなかった。

職業性騒音暴露歴の有無およびHbA1c 値については、
男女とも有意な関連は認めなかった。

加齢に伴う男性の高音域聴力低下の要因として、
職業性の騒音暴露とは独立してなお動脈硬化の関与が示唆された。

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『聴力性差と動脈硬化』 三瀬和代 他,Audiology Japan 56, 269~275, 2013
(愛媛大学)

4000Hz,8000Hz の聴力は男性が女性に比べ有意に低下していた。

男女ともHbA1c はいずれの周波数の聴力レベルとも有意な関連を認めなかった。

IMT は男性で4000Hz,8000Hzの聴力レベルと有意な関連を認めた。
IMT も男性が女性に比べ有意に高値を示した。

IMT:頸動脈内膜中膜複合体肥厚度