本:江戸と現代 0と10万キロカロリーの世界

昨日のムヒカ前大統領の話を聞いて思い出したのがこの本。江戸と現代

『江戸と現代 0と10万キロカロリーの世界』
石川英輔 著,講談社刊

”私たち21世紀の初めに暮らす日本人は、
一人あたり1日に
12万5000キロカロリー程度のエネルギーを
消費しながら生きている。”

冒頭から、こんな書き出しではじまります。
10万キロカロリーといってもピンとこないのですが、
0℃の水1立方メートル(=1t)の水を
沸騰させるのに必要な熱量だそうです。

と、そう聞かされても、まだピンと来ないのですが、
まあ「結構使ってるんだなあ」と漠然とは思います。
↑これを大変なことと感じられないことが、
もうすでに今の浪費生活にどっぷりと浸かっている証拠かもしれません。

このエネルギー源は、
多少は原子力によるものも含まれているでしょうが、
多くは石油や天然ガスといった化石燃料によるもの。

だから、「今後もこの生活を続けたければ原子力を増やしましょう!」
とかいう話ではありません。

このエネルギーの使い方を江戸時代と比較することで、
はたして日本人は昔より幸せになったか、という話なのです。

江戸時代は、化石燃料など0に近く、
基本的に動力は人力かせいぜい牛や馬。
つまり、太陽エネルギーではぐくまれた食料・飼料のみでした。
この太陽エネルギーをベースに考えると、
江戸時代は0カロリーに対して、現代は10万キロカロリーとなるそうです。

さて、消費エネルギーが10万倍
(比較が0エネルギーなら本当は∞なのだが)
となった我々の生活は、果たして10万倍幸せになったのでしょうか?
これがこの本の主旨。

江戸時代と現代を比べるのですが、
あまりにもかけ離れているので、
昭和30年頃、45年頃との比較もしています。
ちょうどそれは、消費カロリーでは、
それぞれ1万、5万キロカロリーなんだそうです。

たとえば乗物。
江戸時代の交通手段は基本的には徒歩。
昭和30年代の主力は自転車。
昭和45年、自家用車の保有率は30%を越えた程度だったそうです。
では、江戸時代の人が
「移動が遅くて不便だ」と愚痴っていたかというと
そんな記録は全く残っていないとのこと。
昔の人は、それが当たり前と思っていたわけです。筆者は、
”10万キロカロリー時代に暮らす私たちは、
きわめて便利な暮らしをしているつもりだが、
実際は0キロカロリ-時代のご先祖様と
同じ程度の満足感を味わっているかどうかもわからないのだ。”
とこの章をしめくくります。

こうした観点から生活を、
・冷やす
・食べ物
・伝える
・観る
・旅をする
・照らす
・着る
・食べる
・住む
・作る
・捨てる、拾う
と、それぞれの章に分けて江戸時代との比較を行っていきます。

ちょっと長くなったので、続きは明日。