本:驕れる白人と闘うための日本近代史2

もう一つ、この本を読んで感じたことは、
自分の国の歴史、それもごく近代のことなのに、
正しい知識を有していないということです。
(ま、ここに書かれていることが、正しいことかどうかは、
きちんと検証してみる必要はあるわけですが。
でも、直感的には限りなく正しい様な気がします。)

たとえば、江戸時代の身分階級制度について。
江戸時代は、士農工商の身分制度が厳しくて、
農民は、身を粉にして働いて得た農産物のほとんど多くを
年貢として吸い上げられ、生活はすごく虐げられていた・・・
武士は街中を威張って歩いていて、
気に入らなければ問答無用で農民も町人も切りつけていた。
そんなイメージないですか?

まあ、江戸時代後期は商人が力を持ってきて、
お侍さんが長屋で傘張りの内職をして糊口をしのいでいる。
そんな武士像もあるにはありますが。
基本的には、農民は奴隷のような存在で自由がなかったと。

ある程度はそういうこともあったかもしれませんが、
西洋における貴族と農奴の関係とは
大きくかけ離れたものであったらしく、
江戸時代の農民はそれほど悲惨であったわけではないらしい。
全国からお伊勢さんにお参りなんかもしていたそうで、
全くその土地に縛られて暮らしていたわけでもないらしい。

全国には寺子屋のような学べる場があり、
町人の子でも農民の子でも頭がよさそうだとなれば、
みんなでその子に学問を学ばせていたと聞きます。
そして、成績がよければ、
何らかの方法で世に出ることができる可能性はあったと聞きます。

その他、本の中で農地解放の話もあまり知らなかったことでした。
(僕だけかもしれませんが)
もともと日本人は、江戸時代までは、
自分勝手に売り買いできるような土地は持っていなかったらしい。
といって、大名や富豪のものでもなかったと。
大名は土地を管理する地位・役職であって、
やはり売ったりすることはできなかった。
では幕府のものかといえば、それもちょっと違うらしい。
それだけ、土地というのは生活の糧を得る大切なもので、
売り買いするたぐいのものではなかったのだと。
みんなで協同で守っていくものだったらしい。
いわば究極の共産主義だったわけだ。

それを明治維新後、政府は西洋式に学べと、
土地に権利書をつけ、一人一人が所有するべきものとしたという。
西洋的な考え方からすれば、
これは確かに農地解放なのかもしれないが、
その結果、法律に疎い農民は農地をだまし取られ、
普通の単なる労働者となりこき使われることになり、
めざとい人間は大地主となり投資家となった。
そして、そこに貧富の差ができたという。

そして、戦後、再度GHQの音頭で再度農地改革が行われた。
アメリカ人の指導によって、農奴的な社会制度を開放したのだと。
しかし、結果的には農地改革は中途半端に終わり、
そこに住んでいない地主と投資家のものになっただけだと。

そして、我々の意識にだけ、
「昔は農民は農奴的な存在で、西洋人が啓蒙して開放した」
という記憶だけが残った、という。

この本を読んでみると、
自分が知っている近代史って何だったんだ?
と思わざるおえなくなる。
まあね、近代史って中学でも高校でも
あんまり大してしっかりやった覚えがありませんね。
何となくテレビで見聞きしたものが、
そのままイメージになっています。

でも、そのイメージは、
誰かが意図的に植え付けたものだったのかもしれません。