温故知新の技術 ブロー液

日常診療でブロー液(ブロー氏液)というものを使っています。
慢性的な滲出液の多い外耳道炎に主に使っていますが、
しん滲出液のない発赤・腫脹の強いタイプにも用いています。

使い出してもう10年くらいになるでしょうか?
もともとは、関西中耳臨床研究会という勉強会で
教えていただきました。
現在では多くの耳鼻咽喉科で使われるようになってきました。

日本での最初の論文報告としては、

「難治性の外耳道および中耳の化膿性炎に対する
ブロー液の使用経験」
寺山吉彦 他,日耳鼻 106:28-33,2003

ではないかと思います。
(海外の論文では、Thorpらが2000年に報告)

少し昔であれば、抗生剤の点耳薬やステロイドの点耳薬で
十分効いたのではないかと思うのですが、
(もちろん、今でもそれらは使っていますが)
近年、MRSAやPRSP、緑膿菌といった
多剤耐性の細菌も増えてきたり、
真菌(カビ)による外耳炎には上記の点耳薬は
逆効果であったりして、治療には難渋することもあります。

こうした場合に、昔であれば、
イソジンで洗浄あるいは塗布、イソジンシュガーを詰め込んだり
といったことをしていました。
(まあ、このイソジンシュガーも今では温故知新かもしれませんが)

このブロー液の本体は13%酢酸アルミニウム水溶液です。
酸性度が強いことと、アルミニウムの収斂作用で、
抗菌作用に優れています。

そもそもは、19世紀にBurrow先生というドイツの医師が
考案された耳用局所薬です。
近年、抗生剤の登場で忘れ去られていた局方だったのでしょうが、
耐性菌の出現にて再び脚光をあびることになりました。

こういう温故知新の技術というのもいいものだと思います。
先週お話しました塩化亜鉛療法もそんな治療法です。

もちろん、新しい治療が効果的で副作用も少ない
いい治療法であれば、どんどん広まっていくべきですし、
それに伴って古い治療法が姿を消すのは
仕方がないことではあります。
それでも、治療に行き詰まった場合は、
時に古いものの中にも有用なものが置き去りにされていないか
見直してみることも必要なのかもしれません。