ちょっと気になる論文1

ちょっと気になる論文を見かけました。
まだまだ消化不良でよくわからないのですが、
見切り発車でアップしちゃいます。
興味を持たれた方は原文をお読みください。
詳しい方がいらっしゃいましたらご教授お願いいたします。

Class switch toward noninflammatory, spike-specific IgG4 antibodies after repeated SARS-CoV-2 mRNA vaccination(SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種の反復により、非炎症性スパイク特異的IgG4抗体へのクラススイッチ)”
出典はScience Immunology 22 Dec 2022 Vol 8, Issue 79
DOI: 10.1126/sciimmunol.ade2798

いつものごとく、アブストラクトはDeepL(無料版)で訳したものです。
”RNAワクチンは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のパンデミックに対する有効な予防策である。高レベルの中和SARS-CoV-2抗体は、ワクチン誘発免疫の重要な構成要素である。最初の2回のmRNAワクチン投与後まもなく、免疫グロブリンG(IgG)反応は主に炎症性サブクラスIgG1およびIgG3から構成されている。しかし,SARS-CoV-2特異的な抗体は,2回目のワクチン接種の数ヵ月後には非炎症性IgG4が増加し,3回目のmRNAワクチン接種やSARS-CoV-2亜型の破たん感染によってさらに増強されることを報告した.スパイク特異的IgG抗体のうちIgG4抗体は,2回目接種直後の0.04%から3回目接種後期には19.27%に平均的に上昇した.このIgG4抗体の誘導は,アデノウイルスベクターを用いた同種または異種のSARS-CoV-2ワクチン接種後には認められなかった.単細胞解析およびフローサイトメトリーにより、3回のワクチン接種後、スパイク結合メモリーB細胞集団の中に、メモリーB細胞全体のレパートリー(中央値1.3%、IQR0.9~2.2%)と比較してかなりの頻度でIgG4スイッチB細胞[中央値14.4%、四分位範囲(IQR)6.7~18.1%)]があることが判明した。このクラススイッチは、抗体依存性の細胞貪食および補体沈着を媒介するスパイク特異的抗体の能力低下と関連していた。Fcを介したエフェクター機能は抗ウイルス免疫に重要であるため、これらの知見は、SARS-CoV-2に対する将来のブースター免疫など、mRNAワクチンを用いたワクチン接種レジメンの選択およびタイミングに影響を与える可能性がある。”

SARS-CoV-2ワクチンは、体内にmRNAを取り込ませて、
自身の細胞にスパイク蛋白を作らせて、
それを免疫細胞が認識して、
獲得免疫が形成されるという理屈で開発されました。

理屈を聞くとなるほど!と思い、
有効率も90%を超えてすごいなと思いましたが、
実際には抗体価の持続がなかなか得られず、そのうちに
ブーストとして追加接種が必要と言われるようになりました。

2回接種が進んできた頃、
それでも変異株はすり抜けて感染すると言われ、
ブレイクスルー感染などと言われました。
これに対しても、まだまだ追加接種で対応を、
などという話でしたが、さすがにちょっと、
少なくとも重症化するリスクの少ない人なら、
本当に必要かと疑問を持つようになりました。

そして今、上の様な論文が出てきています。

ウイルスが体内に侵入してきた時に、
IgG抗体を体内で産生させて中和させて駆除しようというのが
ワクチンの基本原理です。
(T細胞にも記憶させるという作用も多少ある様ですが、
 メインはIgG抗体です。)

ただ、IgG抗体にはIgG1からIgG4までの4つのサブタイプがあり、
主に中和して疾患予防に貢献するのはIgG1なんだそうです。

そしてそのIgG1の血清中の量は、
1回目接種後(Post1st)少し上昇し、
2回目接種後(Post2nd)さらに上昇するも、
2回目接種から210日後(FU post2nd)に少し減少し、
3回目接種後(Post3rd)で再び上昇、
3回目接種から180日後(FU post3rd)では減少傾向の人もいる、
という様な変動がみられました。


IgG2も同様の変動。


IgG3は回数を重ねるにつれ徐々に抗体価が上がらない様になりました。


それに対してIgG4は、
2回目接種後までは全く抗体価が上がりませんでしたが、
2回目接種から210日頃から急に増え出しました。


IgGのサブタイプの割合で見てみますと、

2回目接種後にIgG4は0.04%だったのに対し、
2回接種から210日後には、19.27%まで相対的な量が増えています。

問題はこれが何を意味しているかということです。

現在のところIgG4の役割については
まだはっきりとわかっていない様です。

ネットでIgG4を検索してみると、
「IgG4関連疾患」というのはたくさんでてくるのですが、
・・・そしてこのIgG4関連疾患の中には
耳鼻咽喉科的には、唾液腺が腫れる病気があり、
診療にあたって念頭においておく必要があるのですが、
IgG4が何をしているのかということについては
あまり詳しく書いてあるのを見かけません。

実際に、この論文の考察のところにも、
”With respect to the control of viral infections, little is known regarding virus-specific IgG4 antibody responses. (ウイルス感染症の制御に関して、ウイルス特異的なIgG4抗体反応についてはほとんど知られていない)”
”So far, few studies on the role of vaccine-induced IgG4 responses against infectious diseases are available.(これまでのところ、感染症に対するワクチンによるIgG4応答の役割に関する研究はほとんどない)”
と書いてあります。

ただ、IgG4は、抗原とくっつく部分の活性はある様ですが、
抗原とくっついた後に、補体がくっついて病原体をやっつける力が弱かったり、
病原体を貪食してしまう細胞を活性化させる力もあまり持っていない様なのです。

専門用語を使って言うと、
抗体依存性細胞貪食(ADCP)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を引き起こす、
Fc依存性エフェクター機能を媒介としたウイルス感染症の除去能が低下している、
ということになります。

こうした抗スパイクIgG4抗体の割合が増えることで、
身体はどうなるのでしょうか?

中和はされるのでそれでいいという可能性もあるかもしれませんが、
ウイルスが除去されないので、
感染した場合にウイルスの持続時間が長くなるかもしれないとも
この論文には書かれています。

また、別の懸念があるようなのですが、
ちょっと長くなてきたので続きは次回にします。