耳管開放症と漢方治療

先日、「漢方jp」というYouTubeのチャンネルを見ていました。

このチャンネルは、2013年イグノーベル賞を受賞され、
フローチャート漢方シリーズの著者でもある
新見正則先生が配信されている番組で、
すごく実践的でためになります。

この「漢方jp」では、各領域の講師の先生が処方について
説明されるコーナーもあります。
先日は竹腰哲男先生が
耳鼻咽喉科領域の漢方についてお話されていました。

竹腰先生はご自身もYouTubeで
明解!西洋医学で耳鼻科漢方」というチャンネルで配信されていて
最近僕はこちらもでもよく勉強させていただいています。

今回(2022.9.16)、耳鼻咽喉科領域の漢方についての講演で、
その最初が耳管開放症についてでした。

耳管開放症というと最初に思いつくのは加味帰脾湯なんですが、
竹腰先生は以前より加味帰脾湯よりも補中益気湯を推されていました。
今回も補中益気湯(+ATPや八味丸)をおすすめされていました。
さらに、漢方jpで講師をされている幾嶋泰郎先生から
当帰四逆加呉茱萸生姜湯も結構有効ですよ
というご意見も紹介されていました。

前回、加味帰脾湯とオキシトシンの話をしました。
加味帰脾湯はオキシトシンレセプターに働き
内因性オキシトシンの分泌が増える可能性があるという論文でした。

ここで、加味帰脾湯と同じくオキシトシンニューロンを刺激する方剤として
補中益気湯も上がっていました。
そして、その効果はどうも「当帰」「大棗」「生姜」にあるのではないかと。

ここで、上で出てきました幾嶋先生がご教授くださいました
当帰四逆加呉茱萸生姜湯の構成生薬をみてみます。
というか、処方名にすでに「当帰」も「生姜」も書いてあります。
あとは「大棗」だけですが・・・
大棗、桂皮、芍薬、当帰、木通、甘草、呉茱萸、細辛、生姜
「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」という名前はついていますが、
実はもっとも多く配合されているのは「大棗」でした。

これはあくまで私見ですが、耳管開放症の治療には、
ひょっとしたらこの
「当帰」「大棗」「生姜」
がポイントになるのかもしれません。

そして、もう少し研究が必要となりますが、
この「当帰」「大棗」「生姜」を配合する処方が
耳管開放症に効果的だとしたら、
内因性のオキシトシンを増やすことが
耳管開放症の改善に役立つ可能性が
あるのではないかと思います。。

1日量に含まれる「当帰」「大棗」「生姜」の量を比較しますと
加味帰脾湯:当帰2.0 大棗2.0 生姜1.0
補中益気湯:当帰3.0 大棗2.0 生姜0.5
当帰四逆加呉茱萸生姜湯:当帰3.0 大棗5.0 生姜1.0
とあります(単位g)。
(手元にあったツムラさんのハンドブックをもとにしています。
 製薬会社さんによって多少配合が違うかもしれません。)

もちろん漢方薬はいろいろな症状や身体に出ている徴候を読み取って
最終的に処方を決定する必要があります。
上の3つ(3つに限らず「当帰」「大棗」「生姜」を含む処方)の
どれを選ぶか、あるいはどう組み合わせて用いるかは、
自声強調、耳閉感、呼吸時の鼓膜音と言った
中心症状「以外」の症状や徴候をもとに鑑別していく必要がありそうです。

たとえば不眠症・貧血気味(加味帰脾湯)や疲れやすい(補中益気湯)、
あるいは冷え症・赤ら顔(当帰四逆加呉茱萸生姜湯)などを考慮して
処方を行うことになると思います。

耳管開放症に対する飲み薬は中々いいのがないのですが、
こうした処方で少しでも良くなってもらえるといいなと思います。