COVID-19に関する論文・記事1

できれば体系的にお話できないかなと思っていたのですが、
バタバタしている間に月日がたって行くので、
とりあえず目についた論文や記事を上げていきます。

翻訳ソフトを使って読んでますので、
読み間違えている部分もあるかと思います。
興味を持たれた方は原文をお読みください。

まずはこれ:
”Gut microbiota dynamics in a prospective cohort of patients with post-acute COVID-19 syndrome(post-acute COVID-19 syndrome患者の前向きコホートにおける腸内細菌叢の動態について)”
出典はBMJ journals Volume 71, Issue 3
http://dx.doi.org/10.1136/gutjnl-2021-325989
香港からの報告です。OpenAccessです。

掲載は今年の1月ですが、投稿は昨年の8月の様です。
でのすで、Omicron株が蔓延する以前と考えておく必要はあります。

post-acute COVID-19 syndrome(PACS)というのは
いわゆるLong-COVID(新型コロナウイルス感染症後遺症)です。

その症状としては、6カ月時点で最も多かった症状は、
疲労(31.3%)、記憶力の低下(28.3%)、脱毛(21.7%)、
不安(20.8%)および睡眠困難(20.8%)だそうです。

今回の報告は、COVID-19に罹り入院した患者さんに関して、
完治したグループとPACSになったグループについて、
腸内細菌叢が、入院時と6ケ月後でどう違うかを調べたものです。

結果を大雑把に言うと、
COVID-19になった人となっていない人(対照群)では
入院時の腸内細菌叢の組成は、明らかに違ったそうです。
細菌叢の多様性が減って豊富さも減少していたとのこと。
(抗生物質の使用の有無は有意差がなかったそうです。)

そして、6ケ月経過して治癒した人とPACSになったヒトでは
治ったグループは腸内細菌叢の組成がコントロールに近づきましたが、
PACSのグループはまだ違いが残っていたとのことでした。

グラフはグループの類似性を比べています。
対照群(グレー)と比べて、PACSになった群の入院時(オレンジ)は
かなり離れています(グレーとは似ていない)。
PACSにならずに最終的に治ったグループ(青)は
オレンジほどではありませんがそれでもグレーとは少し違っています。
6ケ月後PACSにならなかった群はかなり対照群に近づきました(水色)が、
PACSになった群はまだ腸内細菌叢の組成が対照群と異なっています。

では、ここでどんな細菌がどう関与しているか。
著者らはサンプル数が少なく研究の限界と前置きしながらも
いろいろと考察しています。

6ケ月後、73.5%がPACSになったそうですが、
発症時のウイルス量とPACS発症に優位な関連はなかったとのこと。

細菌がどう違ったか:

PACS患者は非COVID-19対照群と比較して、
Collinsella aerofaciens, F. prausnitzii, Blautia obeum
(上のグラフオレンジ下から1,2,4)が有意に少なく、
Ruminococcus gnavusとBacteroides vulgatus(青色の上の2つ)が
多かったそうです。

Collinsellaについては以前の当院のブログでも
名古屋大学の研究について紹介しました。
SARS-Cov-2と腸内細菌2 
やっぱりCollinsellaが腸内にいる方がよさそうです。

次にPACSの症状と腸内細菌の関連を調べました。
呼吸器症状が持続する患者の腸内マイクロバイオーム構成は、
Streptococcus anginosus、Streptococcus vestibularis、
Streptococcus gordonii、Clostridium disporicumなどの
多くの日和見病原体と正の相関があったそうです。
これらの細菌が多いと呼吸器症状が持続する可能性が高いと考えられますが、
呼吸器症状が続くためにこれらの細菌が増えた可能性もあるかもしれません。

同様に、神経精神症状および疲労といった症状は、
Clostridium innocuum、Actinomyces naeslundiiなどと相関があったそうです。

さらに、Faecalibacterium prausnitziiなどの酪酸産生種は、
6カ月後に脱毛が持続している患者(n=23)では、
COVID-19以外の対照群と比較して有意に減少していたそうです。

総括として、Bifidobacteria属、Roseburia属、Faecalibacteria属を含む
いくつかの共生細菌の損失が、特に症状の持続と関連していたそうです。
特に最後の2つの細菌は、いくつかの短鎖脂肪酸を産生する重要な細菌であり、
免疫恒常性の維持に主要な役割を担っているそうです。

たとえば、F. prausnitzii は、免疫調節特性を持ち、
NF-kB 経路の阻害による炎症反応のダウンレギュレーション24、
インターロイキン 8 の合成や分泌の抑制など
宿主防御に貢献できることが知られているそうです。

最終的には、もっと大規模な調査がなされてみないとわかりませんが、
今後腸内細菌叢を整えることで、PACSを予防したり治療したりできるように
なっていくかもしれません。