本の紹介:五感生活術(1)

五感生活術
このブログでは、読んでおもしろかった本を時々紹介しようと思います。
私の興味本位での紹介ですから、興味のない人はスルーしてください。

『五感生活術 眠った「私」を呼び覚ます』 山下柚実 著,文春新書

私は耳鼻咽喉科医師ですので、他の科の先生と比べても
五感とは縁が深い生活をしています。
中でも聴覚・嗅覚・味覚は最も耳鼻咽喉科と関係のあるところです。
そうした縁もあって、最近五感についてもっと知りたくなって、
色々な五感にまつわる本を片っ端からよみたいと思っています。

今回はこの本を読む機会を得ました。
平成14年に出版された本なので、すでに10年以上たっていますが、
内容的にはほとんど古さを感じません。
むしろ著者が本書の中で指摘している内容は時がたつにつれ、
益々顕著になってきているように思います。
現代人の生活は視覚に頼る比率がきわめて多くなっています。
視覚情報というのは、刺激が強く、わかりやすい反面、
錯覚などもおこしやすく、結構だまされやすいものです。

たとえば、「ママ」という言葉を聞かせながら、
映像で「パパ」という字幕をつけて口の動きを見せれば、
ほとんどの人は「パパ」と聞くでしょう。
結構注意していないと、知らず知らずの間に誘導されている場合があります。

また、聴覚というのは、
24時間(眠っている時でさえ)周囲の気配を聞いています。
著者が本の中で、初めてウォークマンを聴きながら自転車に乗った時に、
周囲の気配がわからずすごく緊張したと述べています。
つまり、普段は聴覚によって周囲の気配を感じ状況判断しているのに、
ウォークマンでそれが遮断されることで、危機感のを感じたのだそうです。
現代の若者なら、それにも慣れてしまっているのかもしれませんが、
本来はやはり危険な行為だと言わざるおえません。

最近、道路交通法で自転車走行中のイヤホン使用に対する罰則が強化され、
その是非について話題になっていましたが、
自分の安全を守るのはもちろん、
他人に衝突したりといった被害を与えないためにも
過度の使用は控える方がいいでしょう。

また、それだけでなく、街中には様々な音があふれています。
もちろん騒音もあふれているわけですが、
まだまだ街中でも鳥のさえずる声や、
虫の音などは注意していると聞こえてきます。
こうした音を聴かないのはもったいないことです。
(そのあたりのことは、また別の機会に書いてみたいと思います。)

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