腸では免疫系も重要な役割を担っています。
消化管の免疫細胞は、
おもに小腸内にパイアー斑と呼ばれる区域に存在しますが、
他に虫垂にもみられ、小腸、大腸の腸壁にも散在するとのこと。
消化管を本拠地とする免疫細胞は、
腸管内の空間とは薄い細胞層で隔てられているのですが、
樹状細胞と呼ばれる細胞がこの薄い細胞膜を貫いて伸び、
その触手がセンサーとなっているそうです。
ふだんは、この触手上に存在するレセプターは、
良性の微生物が発する種々のシグナルを検知し、
万事順調で防御の必要がないことを免疫系に保証しています。
ところが、有害で危険な細菌が検知された場合には、
生得的な免疫反応のスイッチが入り、
腸壁における一連の炎症反応をひきおこすことで
病原体を寄せ付けないようにしています。
この時、樹状細胞はサイトカインと呼ばれる
シグナル分子を分泌します。
このシグナル分子は周囲の免疫細胞に情報を伝えるとともに
消化管壁を越えて血流にのり、体循環に入り、
やがて脳に到達し、脳では、
有害な細菌の侵入で腸が臨戦態勢にあることを知ります。
微生物が腸壁を覆う粘液層を通り抜けると、
微生物の細胞壁を構成する分子は腸壁の下にある、
免疫細胞の触手のレセプターが反応し、免疫細胞が活性化され、
その微生物の危険度に応じた免疫反応を引き起こします。
その種の分子の代表がリポ多糖(LPS)です。
主に大腸菌、赤痢菌、サルモネラ菌などのグラム陰性菌
と呼ばれる微生物の細胞壁にみられ、
これを免疫細胞が感知すると、
腸の漏れやすさが高まり、腸の炎症が起こるわけです。
こうした免疫系の反応は、悪性の細菌やウイルスの腸感染
ばかりではなく、動物性脂肪の多い食べ物を好む人などでも
起こりやすいらしく、そうした人の腸内には、
ファーミキューテス門やプロバクテリア門という種類の
細菌の比率が高く、それゆえ、腸での免疫メカニズムが
恒常的に活性化されやすい状態にあり、
炎症、ストレス、脂肪分の過剰摂取により、
腸での免疫細胞の強い活性化が引き起こされやすいのだそうです。