本:腸と脳 第二の脳がもたらすパラダイムシフト4 免疫系

腸では免疫系も重要な役割を担っています。
消化管の免疫細胞は、
おもに小腸内にパイアー斑と呼ばれる区域に存在しますが、
他に虫垂にもみられ、小腸、大腸の腸壁にも散在するとのこと。

消化管を本拠地とする免疫細胞は、
腸管内の空間とは薄い細胞層で隔てられているのですが、
樹状細胞と呼ばれる細胞がこの薄い細胞膜を貫いて伸び、
その触手がセンサーとなっているそうです。

ふだんは、この触手上に存在するレセプターは、
良性の微生物が発する種々のシグナルを検知し、
万事順調で防御の必要がないことを免疫系に保証しています。

ところが、有害で危険な細菌が検知された場合には、
生得的な免疫反応のスイッチが入り、
腸壁における一連の炎症反応をひきおこすことで
病原体を寄せ付けないようにしています。

この時、樹状細胞はサイトカインと呼ばれる
シグナル分子を分泌します。
このシグナル分子は周囲の免疫細胞に情報を伝えるとともに
消化管壁を越えて血流にのり、体循環に入り、
やがて脳に到達し、脳では、
有害な細菌の侵入で腸が臨戦態勢にあることを知ります。

微生物が腸壁を覆う粘液層を通り抜けると、
微生物の細胞壁を構成する分子は腸壁の下にある、
免疫細胞の触手のレセプターが反応し、免疫細胞が活性化され、
その微生物の危険度に応じた免疫反応を引き起こします。

その種の分子の代表がリポ多糖(LPS)です。
主に大腸菌、赤痢菌、サルモネラ菌などのグラム陰性菌
と呼ばれる微生物の細胞壁にみられ、
これを免疫細胞が感知すると、
腸の漏れやすさが高まり、腸の炎症が起こるわけです。

こうした免疫系の反応は、悪性の細菌やウイルスの腸感染
ばかりではなく、動物性脂肪の多い食べ物を好む人などでも
起こりやすいらしく、そうした人の腸内には、
ファーミキューテス門やプロバクテリア門という種類の
細菌の比率が高く、それゆえ、腸での免疫メカニズムが
恒常的に活性化されやすい状態にあり、
炎症、ストレス、脂肪分の過剰摂取により、
腸での免疫細胞の強い活性化が引き起こされやすいのだそうです。