僕が医師になるまで19

もう1回お遍路さんの話。

結局、大学時代に訪れることができた霊場は35ヶ所でした。
徳島の多くと、高知の半分くらいでしょうか。

徳島で1~10番を回ったのは比較的まだ覚えているのですが、
そのあと、いつどのように徳島の霊場を回ったか覚えていません。
おそらく、徳島出身の同級生の車に乗せてもらって
行ったのではないかと思うのですがどうしても思い出せません。

そんなくらいですから、そのあとのお寺の様子もほとんど覚えてないのですが、
そんな中、すごく印象に残っている寺院が一つあります。

第23番霊場 薬王寺
http://www.88shikokuhenro.jp/tokushima/23yakuoji/index.html

徳島県の日和佐という所にあります。
日和佐の地名はそれより前から、
ウミガメの産卵の浜で有名なことから知っていました。

へぇ~、ここがウミガメの街なんだ。
そう思いながら、山の麓、少し階段を登った所に薬王寺があります。

このお寺で何が印象的だったかというと、
境内の中に瑜祇塔(ゆぎとう)と呼ばれる塔があるのですが、
そこには、「九相図」と呼ばれる仏教絵画が掲示されたあったのでした。

これは、野外にうち捨てられた死体が、
朽ちていく経過を9段階にわけて描かれたものです。
見てみたいヒトはネットで「九相図(くそうず)」で検索してみてください。
ただし、グロテスクなところがありますので閲覧注意でお願いします。
「美女であっても死んだらこうなるよ」
ということを見せて、煩悩を断ち切りなさいということです。

僕はここでこの九相図を初めてみました。
そのリアルさ。
怖かった・・・

そうして、身が少し引き締まったところで次は「戒壇巡り」です。
安置されている仏像の脇に地下に降りる階段があります。
ここを降りていくと・・・
全くの暗闇!
何も見えません。
手探りで仏像の台座の後ろ側付近にたどり着きます。
そこに何があったか、全く思い出せないのですが、
手探りで暗闇を歩いて行くうちに不思議な感覚になりました。

この戒壇巡り、全国のいろいろな寺院にある様ですが、
ここ薬王寺では薬師如来様と結縁することができるとされています。

完全に視覚が閉ざされた時の不安、
普段何気なく当たり前と思っている「眼が見えるということ」に対する感謝、
暗闇の中から戻ってきた時の開放感・安堵感。
色々な感覚を感じることができました。